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ベルリン“金熊”獲得の日仏合作が緊急公開!『アダマン号に乗って』日本のプロデューサーが語る「今の時代に必要な作品」

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ライター:#BANGER!!! 編集部
ベルリン“金熊”獲得の日仏合作が緊急公開!『アダマン号に乗って』日本のプロデューサーが語る「今の時代に必要な作品」
『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

2023年2月、第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金熊賞を受賞した日仏共同製作によるニコラ・フィリベール監督最新作『アダマン号に乗って』が、4月28日(金)より全国公開される。

世界中で話題を呼んでいるドキュメンタリー作品の日本公開に伴い、このたび共同プロデューサーを務めた波多野文郎氏(配給会社ロングライド 代表取締役)がフィリベール監督との交流、そして作品への想いを明かした。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

仏セーヌ川にたゆたうデイケアセンター

本作は、クリステン・スチュワートらベルリン映画祭の審査員たちが、華々しい作品群の中から最高賞<金熊賞>を贈り、「人間的なものを映画的に、深いレベルで表現している」と賞賛された。手がけたのは、世界的大ヒット作『ぼくの好きな先生』(2002年)などで知られるニコラ・フィリベール監督。多様性が叫ばれる以前から、多様な存在や価値が共にあることを淡々と優しい眼差しで映し続けてきた現代ドキュメンタリーの名匠による最新作だ。

ニコラ・フィリベール監督 ©Jean-Michel Sicot

仏パリはセーヌ川のきらめく水面に照らされた、木造建築のユニークなデイケアセンターの船<アダマン>。精神疾患のある人々を無料で迎え入れ、絵画、音楽、ダンスなど創造的な活動を通じて社会と再びつながりを持てるようサポートしている。この船では誰もが表情豊か。共感的なメンタルケアを貫くこの場所をニコラ監督は「奇跡」だという。

深刻な心の問題やトラウマを抱えた人々にも、素晴らしい創造性があり、お互いの違いを認めともに生きることの豊かさを観るものに伝えてくれる。本作は、間違いなく最も「優しい」映画であり、この時代にもたらされた“希望”そのものである。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

配給会社ロングライド代表/共同プロデューサー・波多野氏インタビュー

4月19日にフランスで公開されるや、大ヒットスタートを切った本作。当初、日本公開は来春の予定だったが、フィリベール監督の「日本の観客にいち早く届けたい」という強い思いと、金熊賞受賞後の国内外のメディアや映画ファンからの大きな反響を受け、フランス公開から日を開けず、急遽4月28日(金)に時期を早めて公開される運びとなった。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

本作はフランス・パリで撮影されているが、実は日本もクレジットに名を連ねる日仏共同製作作品。配給会社ロングライドが『人生、ただいま修行中』(2018年)に続き、製作に参加している。

このたびロングライドの代表取締役であり、フィリベール監督と20年来の交流を持つ本作の共同プロデューサー、波多野文郎氏がインタビューに応えた。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

「アダマン号を向き合う対象に選んだことは必然」

―精神疾患の患者を受け入れている、パリ・セーヌ川に浮かぶデイケアセンター「アダマン号」をドキュメンタリー映画とした、その企画発足について

フィリベール監督から、この企画について2019年秋に聞いていました。『人生、ただいま修行中』の日本公開のプロモーションで来日していた際です。パリのセーヌ川にあるデイケアセンターで撮影ができそうなので行ってみようと思う、と。

フィリベールは、『すべての些細な事柄』(1996年)でも独特の治療法で知られる精神科クリニック<ラ・ボルド>について、『かつて、ノルマンディでー』(2007年)ではノルマンディーで起きた猟奇殺人事件のその後についてカメラを向けてきました。彼は、これまで精神疾患そのものについて、そして人間の狂気とは何か? また我々が狂気をどう捉えるかということを、重要なテーマとしてきました。なので、今作もフィリベールという作家として、アダマン号を向き合う対象に選んだことは必然的ではないでしょうか。

ニコラ・フィリベール監督 ©Michael Crotto

―フィリベール監督がアダマン号に惹かれた理由は?

場所そのものではないでしょうか。セーヌ川の上、パリの大都会のど真ん中にある、ということが面白い。患者さんが自由に行き来できる、そこに収容されてるわけではなく、朝やってきて夜は好きなときに帰るスタイル、それが非常に面白くもあり新しかったと言っていました。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

「本作は間違いなくフィリベール監督の最高傑作の一つ」

―企画・製作段階で監督と、どのような話し合いがあった?

最初の段階で、撮影ではなるべく登場人物は少なくした方がいいのでは、とリクエストしました。その方が観客が登場人物に感情移入がしやすいと思ったからです。ですが、全く採用されていなかったですね(笑)。患者さんもケアするスタッフの方もたくさん登場します。また、フィリベール監督は当初、アダマン号で撮影することを悩んでいたんです。

船の中で撮影することは非常に難しいことです。中は暗い場所も多く、騒音もあり、川の上なので揺れもあったりと、物理的制約を気にしていました。ただ、完成した作品ではそれらが全く気にならない出来になっていて、工夫や努力を感じます。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

―完成した作品を観て

20年近くフィリベール監督と付き合ってきて、本作は間違いなく最高傑作の一つと感じました。それでいて、この先もっと面白い作品を作ることができるのだろうと期待させられる。そう感じました。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

「ベルリンでは上映後にスタンディングオベーションが起こりました」

―波多野氏が思う本作の一番の魅力

人間の豊かさを発見できる作品と言えます。世界にはいろんな人がいる、自分とそれ以外の人間、それぞれの魅力を知ることができます。精神疾患の患者さんたちを優しい眼差しで捉えたその映像は、我々が彼らに対して抱いてしまっている凝り固まった考えを改めさせてくれるような気がします。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

―ベルリン国際映画祭での金熊賞(最高賞)は予想できたか?

海外の映画祭では、映画がつまらないと、プレスや客が途中退場することはざらにあります。ですが、本作は非常にあたたかく迎えられ、途中退席する人もおらず、上映後にはスタンディングオベーションで長い喝采が起こりました。

最高賞受賞については全く期待しておらず、コンペティションに入選されたことだけでも我々にとってはご褒美であり、嬉しいことだったので。実際に受賞した時は驚きましたし、本当にうれしかったですね。

『アダマン号に乗って』© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

「こういった作品が多くの人に受け入れられること自体が、大事なこと」

―フィリベール監督を支える理由

監督の人柄が一番の理由です。もちろん才能もありますが、その人柄が最大の理由と言えます。僕としても、仲間に入れてもらえて感謝しています。

―観客へのメッセージ

『アダマン号に乗って』は、今の時代に必要とされている作品だと思います。分断や偏見、自分だけの正当性を主張することがまかり通る時代に、いかにして自分と異なる人たちを受け入れていけるのかが、押し付けがましくなく描かれています。こういった作品が多くの人に受け入れられること自体が、大事なことであると思います。ぜひ劇場でご覧いただきたいです。

『アダマン号に乗って』は2023年4月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開

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