第95回アカデミー賞で作品賞・脚色賞の2部門にノミネートを果たした『ウーマン・トーキング 私たちの選択』が2023年6月2日(金)より全国公開。女性の尊厳を守るために語り合った女性たちとその言葉を、国際女性デーの今日、ここに紹介したい。
監督サラ・ポーリー、主演ルーニー・マーラ
映画『ウーマン・トーキング 私たちの選択』の原作は2018年に出版され、<The New York Times>ブックレビュー誌の年間最優秀書籍に選ばれたミリアム・トウズによるベストセラー小説「WOMEN TALKING」。2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件をもとに描かれている。
監督は『死ぬまでにしたい10のこと』(2003年)『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)『スプライス』(2008年)などで俳優として活躍し、27歳にして『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』(2006年)で監督・脚本家としてデビュー、ゴールデングローブ賞ほか数々の賞を受賞したサラ・ポーリー。本作もすでに世界の賞レースで多くの受賞を果たし、本年度アカデミー賞では作品賞、脚色賞の2部門でノミネートされている。
主演は、その演技力で過去2度アカデミー賞にノミネートされたルーニー・マーラ。その他、Netflixのドラマシリーズ『ザ・クラウン』で2度エミー賞を獲得したクレア・フォイ、A24配給『MEN 同じ顔の男たち』も話題を呼んだジェシー・バックリー、『007』シリーズのQ役でおなじみのベン・ウィショーなど、そうそうたるメンバーが出演する。
出演とプロデュースを兼任したのは、3度のオスカーに輝く名優フランシス・マクドーマンド。本作のオプション権を獲得した彼女は、ブラッド・ピットが率いる映画制作会社<PLAN B>へ企画を持ち込み、映画化が実現した。これまで『ムーンライト』(2016年)や『ミナリ』(2020年)などをアカデミー賞に送り出してきた<PLAN B>だけに、その審美眼はお墨付きだ。
現在(いま)と繋がる女性たちの団結
1857年、ニューヨークの被服工場で多くの女性が亡くなったことをきっかけに、女性たちが低賃金・長時間労働に対する抗議を行ったことが<国際女性デー>の起源だ。そして、約60年後となる1908年3月8日に女性労働者たちが賃金改善、労働時間短縮、婦人参政権を求めてデモを実施。それ以来、3月8日は国際女性デーとして制定され、賃金・労働条件の向上を示す<パン>と、女性の尊厳・人権の確保を表す<バラ>がシンボルとなっている。
本作の舞台は2010年。1908年からおおよそ100年後の女性たちが、女性の尊厳をかけた話し合いを行う。赦すか、闘うか、それとも去るか――。48時間の語り合いはそれ自体が、これまで男性に対して従順であった彼女たちによるデモ行為の第一歩である。
本作で描かれる、とあるキリスト教一派の村で起きた出来事。平等と、より大きな権利の名の下に女性たちが団結する様子は、とてもタイムリーでもある。撮影中には、中絶の権利を認める<ロー対ウェイド判決>が半世紀ぶりに覆されてしまった。
本作の音楽を担当した作曲家、ヒドゥル・グドナドッティルは「とてつもない後退に感じられました」と語る。
新型コロナウイルス禍の中、DVが増加しているという報告をたくさん聞き、この物語はリアルタイムで私たちの周りに起こっていることだと気づきました。多くの女性や子どもたちが家庭に閉じ込められ、ひどい暴力を受けているのです。社会が大きく後戻りしているように感じました。そんな中、ロー対ウェイド判決が覆され、私は耳を疑いました。でも『では何ができるか』を考える時、私の答えはいつも『諦めないこと』です。なぜなら、映画と同じように、共に立ち向かう時こそ私たちは最も強いからです。
「優しさを究極の目標とする世界への希望」
「この物語を伝える必要があるとすれば、今なのです」と語るのは本作のプロデューサー、デデ・ガードナーだ。
これは生涯続く話だと思います。なぜなら、これまでもそうだったからです。残念ながら、この映画が描いていることが解決し見当外れになる日があるのか分かりません。ですがこの映画が本当に生きているのであれば、制作されている瞬間や公開された瞬間と対話するものだと思います。
――本作で描かれるのは単なる過去の話ではなく、今の女性たちの話でもあるのだ。
本作での演技が評価され、多数の助演女優賞を受賞したクレア・フォイは、「『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は男性を非難するための映画ではない」と語る。
この映画は、女性が男性より優れていると主張したり、男性を非難したりするためのものではありません。人類すべてが互いに傷つけあわずに生きていける世界、優しさを究極の目標とする世界への希望を描いているのです。
尊厳を守るために語り合う女性たち。今もなお、世界中に存在する女性たちのたたかう姿が本作には映し出されている。この映画を通して、クレアが語るような「優しさを究極の目標とする世界への希望」を感じてもらいたい。
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は2023年6月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で起きた連続レイプ事件。これまで女性たちはそれを「悪魔の仕業」「作り話」である、と男性たちによって否定されていたが、ある日それが実際に犯罪だったことが明らかになる。タイムリミットは男性たちが街へと出かけている2日間。緊迫感のなか、尊厳を奪われた彼女たちは自らの未来を懸けた話し合いを行う―。
監督・脚本:サラ・ポーリー
製作:デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー フランシス・マクドーマンド
製作総指揮:ブラッド・ピット リン・ルチベッロ=ブランカテッラ エミリー・ジェイド・フォーリー
出演:ルーニー・マーラ クレア・フォイ ジェシー・バックリー ベン・ウィショー フランシス・マクドーマンド
制作年: | 2022 |
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2023年6月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開