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「“愛”という言葉では全てを正当化できない」パク・チャヌク監督『別れる決心』主演タン・ウェイが語る「私の人生の一部が完成しました」

「“愛”という言葉では全てを正当化できない」パク・チャヌク監督『別れる決心』主演タン・ウェイが語る「私の人生の一部が完成しました」
『別れる決心』© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

2023年最もロマンティックな作品との呼び名も高い、パク・チャヌク監督最新作『別れる決心』。第76回英国アカデミー賞にて監督賞、非英語作品賞へのノミネートも発表された本作で、主人公の刑事へジュン(パク・ヘイル)と惹かれ合う美しき容疑者ソレを演じているタン・ウェイに注目が集まっている。

約1万人の中から選ばれヒロインデビュー

ヴェネチア国際映画祭にてグランプリの金獅子賞に輝いたアン・リー監督の『ラスト、コーション』(2007)で熱烈な映画デビューを飾ったタン・ウェイ。中国出身の彼女はミス・ユニバースにも選ばれたほどの美貌の持ち主だが、約1万人の中からオーディションで『ラスト、コーション』のヒロインに大抜擢され、台湾版アカデミー賞と言われる「第44回台湾金馬賞(金馬奨)」で最優秀新人賞を獲得し一躍注目の存在となった。

その後も、キム・テヨン監督の韓国・香港・アメリカ合作の映画『レイトオータム』(2010)で韓国の映画賞である「百想芸術大賞」で外国人初の最優秀演技賞を受賞し、鮮烈な印象を残した。さらに、中国国内で5億元を超えるヒット作となった『めぐり逢いの予感/北京ロマンinシアトル』(2013)や、「第34回香港電影金像奨」で作品賞を獲得したアン・ホイ監督の『黄金時代』(2014)ではタン・ウェイ自身も2015年度の香港電影導演會年度頒獎禮・第2回英國倫敦國際華語電影節にて主演女優賞を受賞するなど、国際的女優として一躍その名を広く知らしめていった。そして、2019年には「大明皇妃 -Empress of the Ming-」にて12年ぶりのテレビドラマ出演を果たすなど、常に大きな注目を集め続けている。

『別れる決心』© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

『別れる決心』で韓国国内映画賞 主演女優賞を軒並み受賞

カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞、本年度アカデミー賞では国際長編映画賞のショートリスト入りも果たし、アカデミー賞ノミネートにも大きく注目が集まるパク・チャヌク監督最新作『別れる決心』。本作でタン・ウェイは、刑事のヘジュン(パク・ヘイル)が追うある事件の、被害者の妻・ソレを熱演。刑事と容疑者という立場ながら互いに惹かれあっていくという役どころだが、二人の交錯する目線とプラトニックかつ艶やかなやりとりに世界中の観客が虜となっている。

『別れる決心』はすでに、韓国国内で社会現象とも言えるブームを巻き起こしており、数々の映画賞を獲得しているが、タンは青龍賞・釜日映画賞・韓国映画評論家賞と韓国国内の映画賞で主演女優賞を軒並み受賞。さらにパクも青龍賞・大鐘賞・釜日映画賞にて主演男優賞を受賞するなど、男女主演賞を揃って受賞を果たすほどの独走状態だ。

『別れる決心』© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

初のパク・チャヌク作品に言語の壁を超えての出演

パク・ヘイルの出演は脚本が出来上がる前に決定し、彼の出演を前提に脚本作業がされたというが、その際にすでにタン・ウェイの出演も決まっていたという。ヒロインのソレを中国人に設定したのも、彼女をキャスティングするためだというほどで、パク監督は「『ラスト、コーション』を見た時から、彼女と映画を撮りたいと思っていました」と念願の出演であったことを明かし、「自信に満ちたソレというキャラクターは彼女なら説得力が出ると思ったんです。そして、彼女とパク・ヘイルなら、魅力的な組み合わせになると思いました」とオファーの決め手を語った。

そして、パク・チャヌク監督作品への出演は本作が初となるが、監督の作品の大ファンだというタン・ウェイは「彼は驚異的な考えの持ち主であり、驚異的なキャラクターを生み出します。私が演じたソレというキャラクターもそうでした。昨日、パレでの公式上映が終わった瞬間、『監督、ありがとうございます。監督のおかげで、私の人生の一部が完成しました』と言ったほどです」とカンヌ国際映画祭の際に喜びを語っている。

タンが演じたソレは、夫が山で亡くなり一人残された時、夫の事件を担当する礼儀正しく清廉な刑事へジュンと出会うという中国人女性である。タンは、韓国の監督との仕事は初ではないが、これまで韓国語を話すことはなかった。本作で一から韓国語を学び、自身のセリフのみでなく相手のセリフまで覚えていたほどの勤勉さであったという。それについて、タンは「仕事を通して学ぶのが好きなので、大変だとは思いませんでした」と言い、「大変だったのは、撮影の最初の頃に使っていた翻訳マシンの方かもしれないです。最初は面白がっていたのですが、あまり役に立たず……。必要がなくなってしまって、結局途中から使わなくなってしまいました」と撮影を振り返った。

劇中でも、普段は韓国語で話すソレが、熱弁する際に翻訳アプリを使用し、へジュンをもどかしい気持ちにさせるシーンがあり、なんとも印象的なのだが、彼女自身も言語の壁を超えての出演であった。

『別れる決心』© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

タン・ウェイが魅せる“新たなファムファタール”とは

『ラスト、コーション』で“女スパイが暗殺目的で誘惑する”という、所謂ファムファタール(男性を破滅させる魔性性のある運命の女性)的な役柄で映画史に名を刻むほどの熱演を魅せたタン・ウェイ。しかしパク監督は、この映画に従来の意味でのファム・ファタールは当てず、意識的に気を配り極力避けようともしたという。女性を神話化したり、性的対象としてみたりする従来のファムファタール像というのは現代の価値観には通用しないかもしれないというのだ。

ただ本作で、ヘジュンを翻弄し惹きつけてやまないソレの姿には“どうやってへジュンを弄ぼうとするのか”と好奇心を持って早合点をすることになるだろう。監督は「ソレは愛という言葉で全てを正当化できないほど、本当に命をかけた愛をしている人物であり、そういう彼女の姿を見ながら、『私が見間違えていたのか』と作品を楽しんでもらえるといい」と語った。タン・ウェイだからこそ魅せることができる、現代に生まれる新たなファムファタール像に注目だ。

『別れる決心』は2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

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『別れる決心』

男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)は捜査中に出会った。
取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしか刑事ヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたへジュンに特別な想いを抱き始める。
やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった……。

監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ

制作年: 2022