話題の俳優ソン・ソック
韓国で観客動員1200万人を突破し、異例のメガヒット記録を更新して世界132か国での公開も決定したクライムアクション『犯罪都市 THE ROUNDUP』がついに日本上陸を果たした。
ハリウッドでも活躍し、今や韓国を代表する俳優となった“マブリー”ことマ・ドンソク演じる“刑事マ・ソクト”と 、史上最悪のヴィラン“カン・ヘサン”を熱演する俳優ソン・ソックの共演が話題になっている。
悪役ながらキレッキレのアクションで観客を魅了するソン・ソックは、そのキャリアからして異色だ。ヘサンというキャラのヤバさからは想像がつかないが、幼少時代は極度の恥ずかしがり屋で、克服のため中学時代にアメリカに留学。一旦韓国に戻って兵役を終えた後はシカゴ芸術大学でドキュメンタリー監督を目指したり、あるときはバスケットボール選手を目指したりして紆余曲折を経た末、天職となる演技にようやくたどり着く。
舞台俳優として活動を始めたのは28歳のとき。そしてスクリーンデビューはそれから4年後、32歳のときに出演した仏韓合作『Black Stone』(2015年)だったというから、意外と遅咲きの俳優だったことが分かる。そんなソン・ソックを、アウトスタンディングな4作品をピックアップしながら大解剖したい。
ブレイクのきっかけになった『私の解放日誌』(2022年)
ソン・ソックを語るうえで真っ先に挙げたいのは、最近「話題のドラマと俳優ランキング」で上位に入っているNetflix『私の解放日誌』(全16話)。同じような毎日の繰り返しで日常に大きな閉塞感を抱えていた3人の兄妹の前に現れる、不思議な雰囲気を漂わせる謎の男“ク氏”を演じた。元カレには裏切られ、同僚からは見下されて自分に全く自信が持てない次女のミジョン(キム・ジウォン)との関係の中で、過去と現在の自分の間で揺れ動きながらも徐々に心を開き、自分を開放していく“ク氏”を繊細に表現し、多くのファンを魅了した。
圧倒的存在感を見せた『D.P. -脱走兵追跡官-』(2021年)
Netflixのオリジナルシリーズで、ジュノ(チョン・ヘイン)とホヨル(ク・ギョンファン)が脱走兵を追跡する「D.P」に扮して軍隊問題の暗部に切り込み、公開されるやいなや韓国でも大きな話題を呼んだ『D.P. -脱走兵追跡官-』(全6話)で、ソン・ソックは鋭い目つきの憲兵隊補佐官ジソプとして登場する。出番はそれほど多くないが、上下関係が厳格な軍隊の中で下っ端兵士や部下を威圧するときのカリスマ性あふれる口調や視線は強烈な存在感を放って視聴者を圧倒した。シーズン1のヒットを受けて続編となるシーズン2の撮影がこのほど終了し、ソン・ソックも続投しているとのこと。キャスティングにやや変化はあるようだが、引き続き大きな話題をさらうことは間違いなさそうなシーズン2、来年公開予定ということなのでぜひともチェックしたい。
上司に振り回される若手を熱演 『サバイバー: 60日間の大統領』(2019年)
社会派ドラマ『サバイバー: 60日間の大統領』(全13話)では、爆破テロによって図らずも大統領代行になった、大学教授上がりの環境省長官ムジン(チ・ジニ)をサポートする優秀な若手秘書室長ヨンジンを熱く演じた。混乱する国をまとめていく中で、従来の政治の常識が通じない堅物のムジンに抜擢されて彼に仕えるものの、その融通のきかなさに振り回され、手を焼き、トホホと嘆く姿がソン・ソックの新たな一面を引き出している。『私の解放日誌』のような渋さではなく、国の将来に理想を持ち、惚れ込んだリーダーのために全力を尽くす姿に思わずヨンジンを応援したくなるだろう。ちなみに本作で上司-部下の関係でタッグを組んでいたチ・ジニとは、『D.P』シーズン2でも共演しているという情報もあり、ここではどんな関係として登場してくれるのか楽しみだ 。
敏腕弁護士役で流暢な英語も披露 『SUITS/スーツ~運命の選択~』(2018年)
米国人気ドラマをリメイクし、ガンソク(チャン・ドンゴン)とヨヌ(パク・ヒョンシク)がダブル主演を務めた2018年ドラマ『SUITS/スーツ~運命の選択~』(全16話)、ソン・ソックはハーバード大学出身の敏腕弁護士、デビッド・キムを怪演した。こちらも出番は多くないものの、 韓国トップクラスの法律事務所で伝説の弁護士として鳴らすガンソクと、抜群の記憶力を持つ天才新人弁護士のヨヌという最強コンビを執拗に追い込む役どころでストーリーに変化を加えている。同作でソン・ソックは、海外生活で磨いた英語の実力を披露。憎らしいキャラクターではあるものの、ネイティブ顔負けの流暢な英語で捨て台詞を吐くシーンには思わず感嘆してしまうことだろう。
最新作『犯罪都市 THE ROUNDUP』では、ヘサンを演じるために体重を10キロ増やし、極限まで作り込んだ鋼のボディで撮影に臨んだというソン・ソック。拳も迫力も別次元のアクションで暴れ回る彼の姿は必見だ。