『ハリー・ポッター』シリーズでスネイプ先生を演じ、圧倒的な存在感を放った故アラン・リックマン。リックマンが生前つづっていた日記を書籍化した「Madly, Deeply: The Diaries of Alan Rickman」の一部が公開され、共演者のダニエル・ラドクリフに対する印象や、ラドクリフのおかげでセブルス・スネイプが魅力的なキャラクターになっていたこと、そして当時は、スネイプ役の降板を考えていたことが明らかになった。
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『ハリー・ポッター』のスネイプ先生で知られるリックマンは、『ダイ・ハード』(1988年)で映画デビューを果たし、『ロビン・フッド』(1991年)や『ラブ・アクチュアリー』(2003年)など多くの作品に出演。2016年に膵臓がんで死去した。リックマンは1972年から日記を書いており、出演作の撮影の様子や公開初日の様子、著名人に会った記録などを記していた。1992年には、彼は自分の人生と仕事についてより細かく記録しはじめ、1日1ページを書く日記を地元の文房具店で購入した。リックマンが生前に綴った日記は26冊に及び、そのうちの数冊には色とりどりのイラストが描かれている。
この度、英ガーディアン紙に公開された日記は、映画『ハリー・ポッター』でスネイプ先生を演じた約11年間を抜粋したもの。そこには、共演者のダニエル・ラドクリフに対する印象や、スネイプを演じる上でラドクリフに助けられていたこと、そして、スネイプ役を降板しようとしていたことが綴られていた。
日記に記した『ハリー・ポッター』に関する3つのエピソード
「ラドクリフは将来、監督や製作をするだろう」
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シリーズ第3作『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004年)を撮影していた2003年5月、リックマンは撮影をともにしたラドクリフ(当時13歳)の印象を次のように綴っている。
「ダニエル・ラドクリフとともに階段にいる——彼は今、とても集中している。演技に真剣で集中しているが、同時に遊び心もある。彼はまだ一人前の俳優ではないが、将来は間違いなく監督や製作をするだろう。彼の両親は静かに見守り、彼をサポートをしている。彼にプレッシャーはないようだ。」
ラドクリフのおかげでスネイプが「若々しく魅力的になった」
リックマンは、ラドクリフのおかげでスネイプが「若々しく魅力的になった」と明かしている。
日記には「スネイプの指輪と衣装を身に着けた瞬間、自分に変化が起きることに気がついた。おしゃべりや笑顔、気さくな態度から離れてしまうんだ。この役は私を絞り込み、引き締めてくれる。映画の撮影現場では、あまり良いキャラクターとは言えないだろう。しかし、スタッフとのコミュニケーションがうまくいかなかったことは一度もない。幸いなことに、ダニエル(・ラドクリフ)が私の役を和らげ、魅力的にしてくれた。そして、若々しさも与えてくれた。」と記している。
リックマンはシリーズの中でも『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』を気に入っていたようで、同作のワールドプレミアが行われた日には、アルフォンソ・キュアロン監督を絶賛している。リックマンは「アルフォンソ・キュアロン監督は素晴らしい仕事を成し遂げた。とても大人っぽい映画で、私が思わず微笑んでしまうような大胆さに満ちていた。その一コマ一コマが、アーティストでありストーリーテラーの仕事そのものだった。」と称えた。
スネイプ役の降板を検討——それでもシリーズに残った理由とは
リックマンは『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002年)の公開後、「セブルス・スネイプ役を降板したい」とエージェントと話し合いを行っていたことを明かした。
「(エージェントの)ポール・リオン=マリスと『ハリー・ポッター』の降板について話している。彼はいずれそのときが来ると思っているようだ。だが、ここでまたプロジェクトが衝突することになってしまった。『ハリー・ポッター』はもういらない、と繰り返した。彼らはその言葉を聞きたがらない。」
リックマンは2005年、前立腺がんと診断された。シリーズに残る決断をしたのは2006年、前立腺がんの治療を受け、病院を退院して間もなくのことだった。リックマンの医師は、前立腺を摘出することが最善の選択であると判断し、米テネシー州ナッシュビルのヴァンダービルト大学医療センターで手術が行われた。
手術後の2006年1月30日付の日記で、リックマンは「やっと『ハリー・ポッター』5作目にイエスと答えた。 感覚は良くも悪くもない。『見届けろ、あなたの物語なのだから』という主張が勝った。」と決意を記している。
最後に、リックマンはハリー・ポッターの最終巻を読んだことを綴り、シリーズに残ろうと思えた一番の理由を明かしている。「ハリー・ポッターの最終巻を読み終えた。スネイプは英雄のように亡くなり、ポッターは自分の子供たちにスネイプのことを、“最も勇敢な男の一人”と表現し、彼の息子をアルバス・セブルスと名付けた。これは正真正銘の通過儀礼であった。7年前にJ・K・ローリングから聞いた、スネイプが(ハリーの母)リリーを愛していたという小さな情報があったから、私はこの役を続けることができた。」と、率直な思いを記した。
リックマンの生前の日記を書籍化した「Madly, Deeply: The Diaries of Alan Rickman」は、2022年10月18日(火)発売。