ジョーダン・ピール監督最新作『Nope/ノープ』が2022年8月26日(土)に公開を迎える。新世代のホラー映画監督として注目を集めるピール監督の人物像を深掘り!! 実は異色の経歴を持っていた!? 彼のキャリアを振り返り、その人となりに迫る!!
お笑い芸人から新世代ホラー映画監督に転身!! ジョーダン・ピール監督の経歴
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— N☁PE (@nopemovie) July 19, 2022
ピールは1979年、米ニューヨーク出身。幼少期に両親は離婚し、白人の母親に育てられた。ニューヨーク州マンハッタンのThe Computer Schoolに進学し、1997年に同じくマンハッタンにあるザ・カルホーン・スクールを卒業。その後、サラ・ローレンス大学に進学するも、レベッカ・ドライスデール(現在、コメディアンとして活躍)と男女お笑いコンビを結成するために中退。2000年代初頭には、アムステルダムとシカゴで活動するスケッチ・コメディーのグループに参加し、2002年にMTVのコメディー・ウィークエンドの司会をつとめた。順調にコメディアンとしてのキャリアを積み、ピールは2003年、米国のコメディー番組「マッドTV!」の第9シーズンに出演した。その後、コメディアンとして活躍するキーガン=マイケル・キーとお笑いコンビを組み、ピールにとって初の冠番組であるスケッチ・コメディー番組「キー&ピール」に出演、2012年から2015年まで5シーズンが放送される人気番組となった。
それまで短編映画に出演していたピールだったが、映画界に本格的に進出することになる。ピールは2016年、コンビの相方であるマイケル・キーとともに『キアヌ』の脚本と製作を手がけた。そして2017年には、ダニエル・カルーヤ主演、ピールが監督と脚本を手がけた『ゲット・アウト』が世界で高い評価を受け、大きな話題に。アカデミー賞4部門にノミネートされ、ピールはアフリカ系アメリカ人として初のアカデミー脚本賞を受賞する快挙を果たした。
新世代ホラー映画を担う鬼才としてスポットライトを浴びたピール監督は、『ゲット・アウト』に次ぐホラー映画『アス』(2019年)を手がけた。本作では、ルピタ・ニョンゴを主演に迎え、自分たちのドッペルゲンガーに出くわした主人公の女性とその家族に降りかかった惨劇を描き、米映画批評サイトのロッテントマトで、93%という高い批評家評価を受けた。ピールは2021年、『キャンディマン』(1992年)続編作の脚本を手がけ、好評を博している。
黒人にとって重要な代弁者・ピール監督が映画製作のアプローチを語る
コメディアンから映画監督に転身した異色の経歴を持つピール。ピールがホラー映画監督として築いたキャリアにより、彼はハリウッド業界の新世代を担う映画製作者の中で、黒人にとって重要な代弁者として位置づけられている。彼の映画製作の道は、必ずしも製作されることを目的とせず、好きなジャンルの脚本を書きたいという“楽しみ”から始まったという。ピールは米The Hollywood Reporter誌のインタビューで、「物語は観衆に共感を促す数少ない方法のひとつ」とその考えを明かしている。
ピールは「物語の力というのは、私たちが本当に共感をして、共感を促すことができる数少ない方法のひとつであるということだ。主人公がいれば、私たちは皆、主人公に、観客を引き込もうとする。よく練られた物語、いわば良い物語というものは、誰かに“誰かのために感じろ”と言うのではなく、エンターテインメントを通して体験することで、誰かに感じてもらうことができる数少ない方法のひとつだ」と語る。
また、ピールは大きな話題を呼んだ『ゲット・アウト』は、2009年に黒人のオバマ米大統領が誕生してから間も無く、物語のコンセプトを思い立ったと明かしている。オバマ米大統領が就任後、米国における黒人の人種差別問題に関する会話に「空白」を感じたという。
ピールは「この映画は、私が“ポスト人種的嘘”と呼んでいるオバマ時代に書いた。オバマが大統領になって人種をめぐる議論が喚起され、人種問題は過去のものと思われるようになった。黒人の大統領が誕生したところで、何ら人種問題は前進しなかった」と明かしている。
謎が多い最新作『Nope/ノープ』はスペクタクル依存を描く
ピール監督最新作『Nope/ノープ』は、南カリフォルニア、ロサンゼルス近郊にある牧場が舞台。馬の牧場を亡き父から受け継いだOJ(ダニエル・カルーヤ)は、半年前の父の事故死をいまだに信じられずにいた。形式上は、飛行機の部品の落下による衝突死とされていたが、OJは「そんな“最悪の奇跡”が起こり得るのだろうか?」と感じ、何よりこの事故の際に一瞬目にした飛行物体を忘れられなかった。牧場の共同経営者で妹のエメラルド(キキ・パーマー)は、この飛行物体を撮影して“バズり動画”を世に放つことを思いつく。そのことを発端に巻き起こる、怪奇現象の連続——。それらは真の“最悪の奇跡”到来の、ほんの序章に過ぎなかった……。
ピールは米Empire誌のインタビューで、兄妹は突然訪れた“最悪の奇跡”を描く本作のテーマを明かし、「私はスペクタクルを作りたかった。私の好きな芸術と、それを見ることができる映画館での体験を促進するような作品をね。脚本を書き始めると、スペクタクルの本質、スペクタクルへの依存性、注目することの陰湿な性質について掘り下げるようになっていった。それがこの映画のテーマで、兄と妹の絆を描いている」と語っている。
日本の公開に先駆け、7月に全米で公開された本作は興収4400万ドル(約60億円)を記録し、初登場1位を獲得している。ジョーダン・ピール監督のサスペンス・スリラー最新作『Nope/ノープ』は、2022年8月26日(土)より全国公開!!
『Nope/ノープ』
監督・脚本:ジョーダン・ピール
音楽:マイケル・エイブルズ
出演:ダニエル・カルーヤ キキ・パーマー ブランドン・ペレア マイケル・ウィンコット スティーヴン・ユァン キース・デヴィッド
制作年: | 2022 |
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