米脚本家組合(WGA)が2021年12月6日、「21世紀の最も優れた脚本101選(※現在のところ)」を発表!過去21年で映画業界を彩った作品が続々と並んだ。あなたを感動させた映画はランクインしているのか!? 10位から1位までをご紹介したい。
ここ2年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、Netflix映画など動画配信サービスが制作する映画作品の存在感が増したり、スクリーン離れが進んだりと、映画業界は時代の波にあおられている。WGAのアーロン・メンデルソーンは「このランキングは過去21年間の偉大な作家と脚本を讃えるものであると同時に、20世紀以降、映画の脚本がどのように進化し、多様化してきたかを研究するものだ。それに、このリストが会話や議論のきっかけにもなる。」と、このタイミングでの発表となった理由を語っている。
#GetOut has been named #1 on WGA’s #101GreatestScreenplays of the 21st Century (*so far) – listen to screenwriter-director @JordanPeele discuss how he created his culture-defining horror thriller on a special bonus episode of @WGAWpodcast: https://t.co/pc2g6JNWGe pic.twitter.com/crZ7nibGHg
— Writers Guild of America West (@WGAWest) December 6, 2021
同組合に加盟する脚本家によって選出された同ランキングのトップには、ジョーダン・ピール監督の長編作品デビュー作でアカデミー脚本賞を受賞した『ゲット・アウト』(2017年)が選ばれた。世界的な韓国映画・ドラマブームの火付け役になったポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(2019年)は、ミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』(2004年)、デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)、コーエン兄弟監督作品『ノーカントリー』(2007年)のアカデミー脚本賞受賞作品とともにトップ5にランクイン。
さらにトップ10には、バリー・ジェンキンス監督の『ムーンライト』(2016年)、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)、クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009年)、キャメロン・クロウ監督の『あの頃ペニー・レインと』(2000年)、クリストファー・ノーラン監督の『メメント』(2000年)が並んだ。ノーラン監督は『メメント』のほか『ダークナイト』(2008年)『インセプション』(2010年)の3作品、タランティーノ監督は『イングロリアス・バスターズ』のほか『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)が選ばれている。日本映画からは宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001年)が67位にランクインした。
10位以降のランキングはぜひこちらからチェックしてみてほしい!
21世紀の最も優れた脚本101選 10位〜1位
10位『メメント』(2000年)監督・脚本:クリストファー・ノーラン 原作:ジョナサン・ノーラン(短編『Memento Mori』)
クリストファー・ノーラン監督の出世作。事件に巻き込まれたことによって前向性健忘という記憶障害に見舞われたレナード(ガイ・ピアース)が、最愛の妻ナタリー(キャリー=アン・モス)を殺した犯人を追う異色サスペンス。特殊な状況に置かれた主人公の心理を再現するため、時間軸を解体した上で再構築された複雑な構成ながら巧みな脚本で衝撃のラストへと観客を導く。
9位『あの頃ペニー・レインと』(2000年)監督・脚本:キャメロン・クロウ
クロウ監督が自身の体験を基に、ブレイク寸前のロックバンドのツアーの同行取材を任された15歳の少年の姿を描いた青春音楽ムービー。15歳の少年ウィリアム(パトリック・フュジット)は伝説的なロック・ライターに自分の記事が気に入られ、ローリングストーン誌の仕事をもらう。さっそく取材で楽屋を訪れた彼は、グルーピーの中にいたペニー・レイン(ケイト・ハドソン)に一目惚れする。家での生活や旅先での生活を追体験することで、クロウは時代とその中での自分の居場所を心の底から見事に捉えている。
8位『イングロリアス・バスターズ』(2009年)監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
第二次大戦下のフランスを舞台に、ナチスに家族を殺されたユダヤ人女性と、情け容赦ないナチ狩りで恐れられるユダヤ系アメリカ人部隊“バスターズ”が繰り広げる壮絶かつ壮大な復讐劇を描いた痛快アクション・エンタテインメント大作。主演はブラッド・ピット、共演にメラニー・ロラン、ダイアン・クルーガー。タランティーノ特有の会話劇に様々な伏線が散りばめらている。
7位『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン 原作:アプトン・シンクレア (『Oil!』)
名優ダニエル・デイ=ルイスを主演に迎え、20世紀初頭を舞台に、石油を掘り当てアメリカンドリームを実現した男の欲望と裏切りの人生模様を描いた。主演のデイ=ルイスはアカデミー主演男優賞を受賞した。監督ロマン・ポランスキー、原案・脚本をロバート・タウンが手掛けた『チャイナタウン』(1974年)と同様に、カリフォルニアのDNAを理解する上で欠かせない作品。アンダーソン監督はインタビューで本作の執筆は「退屈しのぎに」始めたと語っていて、アプトン・シンクレアの小説の一節を引用し、物語を生み出した。
6位『ムーンライト』(2016年)監督・脚本:バリー・ジェンキンス 原作:タレル・アルヴィン・マクレイニー(『In Moonlight Black Boys Look Blue』)
貧困地域に生まれた孤独な黒人少年を主人公に、彼が自らのセクシャリティに悩み、自分のアイデンティティと居場所を探し求めてもがき苦しみながら成長していく様を、少年期、青年期、成人期の3パートに分け描き出したヒューマン・ドラマ。第89回アカデミー賞では作品賞を含む3冠に輝いた。ジェンキンスとマクレイニーは、マイアミのリバティシティで、薬物依存に苦しむ母親のもとで育ちました。ジェンキンズは、マクラニーの作品を映画化している間に、脚本が必ず「自分とマクレイニーの人生を組み合わせた伝記」になることに気づいたとポッドキャスト「Script Apart」で語っている。
5位『ノーカントリー』(2007年)監督・脚本:ジョエル&イーサン・コーエン 原作:コーマック・マッカーシー(『血と暴力の国』)
米作家コーマック・マッカーシーの犯罪小説「血と暴力の国」を映画化。マッカーシーの美しい小説を、コーエン監督の優れた手腕によって命を吹き込まれた傑作。80年代、メキシコ国境沿いのテキサスを舞台に、麻薬取引がらみの大金を持ち逃げしたばかりに、理不尽なまでに容赦のない宿命を背負わされてしまう男の運命を描いた。残忍な始まりから皮肉な終わりまで、緊張感の絶えないスリラー。ジョシュ・ブローリン、トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデムら出演。
4位『パラサイト 半地下の家族』(2019年)監督:ポン・ジュノ 脚本:ポン・ジュノ、ハン・チンウォン
豪邸に暮らす裕福な家族と出会った極貧家族が繰り広げる過激な生き残り計画の行方を描いたブラック・コメディー作品。第72回カンヌ映画祭で最高賞パルム・ドールに輝き、第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞した。ポン・ジュノ監督は物語の着想について「大学生のときに、家庭教師をしていたことがあったんです。豪邸に住む中学生の男子を教えていました。ある日、その少年が自宅の2階にあるプライベートサウナに案内してくれて、それがあまりにも豪華なサウナで圧倒されたんです。家庭教師をやっているときは、赤の他人の私生活をスパイしているような感覚を覚えていました。その経験がインスピレーションのひとつになっていますね。」とBANGER!!!のインタビューで明かしてくれている。
3位『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:アーロン・ソーキン 原作:ベン・メズリック(『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』)
誕生からわずか数年で世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)へと急成長した“facebook”をめぐる創業秘話を鬼才デヴィッド・フィンチャー監督が映画化。創設者マーク・ザッカーバーグと彼を取り巻く若者たちが織りなす華麗なサクセス・ストーリーに秘められた光と影の物語を描いた。ソーキンの人間性とユーモアに満ちた魅力的な台詞、そしてフィンチャーの映像スタイル、キャストや音楽が見事に融合した作品。ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイクら出演。
2位『エターナル・サンシャイン』(2004年)監督:ミシェル・ゴンドリー 脚本:チャーリー・カウフマン 原案:チャーリー・カウフマン、ミシェル・ゴンドリー、ピエール・ビスマス
終わってしまった恋の思い出を捨てた恋人クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)と捨て切れなかった主人公ジョエル(ジム・キャリー)のかけがえのない楽しかった日々を辿っていく切ないラブ・ストーリー。「もし、誰かの記憶から自分が消されたことを知らせるハガキを人々に送ったらどうだろう?彼らはどう反応するだろうか?」というコンセプチュアル・アーティストのピエール・ビスマスが、ミシェル・ゴンドリー監督を介して語ったアイデアが物語のきっかけとなった。
1位『ゲット・アウト』監督・脚本:ジョーダン・ピール
米人気コメディアン、ジョーダン・ピールの監督デビュー作。全米では大ヒットを記録して大きな話題を集めたホラー・サスペンス。米国が抱える根深い人種問題を背景に、白人の彼女の家を初めて訪問することになった黒人青年を待ち受ける予測不能の運命を不穏なタッチでスリリングに描いた。主演はダニエル・カルーヤとアリソン・ウィリアムズ。ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナーらが出演した。「『ゲット・アウト』は、単に黒人男性の主人公をホラー映画の中心に据えたときに起こること以上のものだと、執筆の早い段階で気づきました」とピール監督はWritten Byに語っている。ホラー映画というジャンルを超えてインパクトを与えた作品だ。