若者から絶大な支持を得る新進気鋭作家・三秋縋のベストセラー小説を林遣都×小松菜奈のW主演で映画化した『恋する寄生虫』が現在、全国公開中だ。“クリスマスイブの約束”が物語のキーポイントとなる本作の公開を記念し、正統派クリスマス映画とは一味違う、“クリスマスに何かが起きる映画”4作をご紹介したい!
『アパートの鍵貸します』(1960年)
監督は『サンセット大通り』(1950年)の巨匠ビリー・ワイルダー。その年のアカデミー賞を総ナメにした名作ラブコメディ。会社員のバクスターが上司に好かれるため、上司と愛人の密会用に自分のアパートを貸し昇進を目指すが、実はかねてから片思いをしているフランがその愛人だった。まったくすれ違っていた2人がようやく近づくのは、クリスマスイブの夜。クリスマスに似つかわしくない大事件が起きるのだが、後半は2人の姿がただただ愛おしくなる可愛らしい作品。
『戦場のメリークリスマス』(1983年)
タイトルに「戦場」と「クリスマス」という言葉が入っているが、戦闘シーンもクリスマスらしい描写もない異色の映画。日本統治下にあるジャワ島レバクセンバタの日本軍俘虜収容所で巻き起こる、日本兵とイギリス兵のと奇妙な友情を描く。クリスマスにまつわるエピソードは劇中2回登場するが、どちらも印象的な贈り物がある。クリスマスの浮足立つような多幸感は描かれていないものの、心にぽっと灯がともるような温かさもある傑作。名ゼリフ「メリークリスマス、ミスターロレンス」は映画を見た後誰もが口に出したくなること請け合いだ。
『ダイ・ハード』(1989年)
ブルース・ウィリスの出世作である大人気シリーズの第1作。クリスマスイブに起こったテロリストによる高層ビル占拠事件に刑事ジョン・マクレーンが立ち向かうアクション映画。別居中の妻子とクリスマスを一緒に過ごすためにわざわざニューヨークからロサンゼルスにやってきたのに肝心の妻とは口論をしてしまったり、テロに巻き込まれてしまったりと、とことん運の悪いジョン・マクレーンの姿が不憫で可笑しい。クリスマスという幸せを象徴する日に人生最悪の出来事が起こり続けるジョン・マクレーンを応援したくなる。
『シザーハンズ』(2005年)
https://www.youtube.com/watch?v=P-Z3ZyaY40w
ジョニー・デップ扮する、ハサミの手を持つ人造人間エドワードが人間の女性に恋をするラブ・ファンタジー作品。毎年クリスマスの季節に雪が降る秘密を、ティム・バートンならではのロマンチックで奇怪なアイディアで、切なくも美しい物語として昇華させた。エドワードはクリスマスの日の出来事がきっかけで深い孤独と悲しみを味わうこととなるが、クリスマスを嫌な思い出として終わらせない感動のラストが圧巻。
『恋する寄生虫』(2021年)
そして、現在公開中の映画『恋する寄生虫』も思わぬクリスマスムービーとなっている。極度の潔癖症を抱える青年・高坂(林遣都)と視線恐怖症で不登校の女子高生(小松菜奈)が虫によって恋に落ちていくファンタジーラブストーリー。人と関わることができずに孤独を感じていた高坂は自分を拒絶する世界に向けて、クリスマスイブに壮大な復讐を計画していた。お互いが出会ったことにより、恐怖症が和らいでいることに気付いた2人は、目の前で世界が終焉する様子を確認するため「クリスマスイブにクリスマスツリーを見に行く」ことを約束し、恐怖症を克服するためのリハビリを実行していく。そして2人の心の距離も徐々に近づいていくことに。しかしそれは、高坂と佐薙の頭の中にいる寄生虫によって操られた出会いであり、皮肉にも世界の終わりを願っていた2人に命の終わりが刻々と近づいていく――。
クリスマスまでもうわずか。王道のクリスマスムービーに飽きてしまったという方は、ぜひ正統派とは一風変わったクリスマスにまつわる映画を今年は楽しんでみてはいかがだろうか。
『恋する寄生虫』は大ヒット上映中!