米国の現地時間2021年3月15日(月)、第93回アカデミー賞のノミネーションが発表された。新型コロナウイルスが猛威を振るった歴史的な1年となった2020年は、配信作品の存在感が際立つ結果となった。
デヴィッド・フィンチャー監督×ゲイリー・オールドマン主演Netflix映画『Mank/マンク』は、最多10部門でノミネート。同じくNetflixで配信された話題作『シカゴ7裁判』など6作品が6部門でノミネートされるなど、史上初だらけだ! 今年度のノミネート作品の傾向、どこで作品をチェックできるかなど、本記事で紐解くことにしよう!
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今年特に話題となっているのが、アカデミー監督賞だ。女性監督が2人ノミネートされており、複数の女性監督が同部門の候補にあがるのは史上初。過去にノミネートされた女性監督は5人で、唯一受賞しているのは『ハート・ロッカー』(2009年)のキャスリン・ビグローのみだ。
今年度は『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネルと、第78回ゴールデングローブ賞でアジア人女性史上初の監督賞を受賞した『ノマドランド』のクロエ・ジャオがノミネート。ジャオは監督賞最有力候補とされており、注目を集めている。
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演技部門のノミネートのうち9人が有色人種であるのも特筆すべき点だ。昨年度は、『ハリエット』(2019年)のシンシア・エリヴォただ1人だった。今年度の主演男優賞には『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』のリズ・アーメッド、『マ・レイニーのブラックボトム』のチャドウィック・ボーズマン、『ミナリ』のスティーヴン・ユァンがノミネート。2人のアジア系俳優が主演男優部門にノミネートされるのは史上初だ。また『ミナリ』のユン・ヨジョンが助演女優賞にノミネートされており、アジア系俳優の活躍が際立つ形となった。
第78回ゴールデングローブ賞では脚本賞を受賞した『シカゴ7裁判』は、『ファーザー』、『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』、『ミナリ』、『ノマドランド』、『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』と並び、6部門にノミネートされた。
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Netflixで配信中のノミネート作品
『Mank/マンク』
作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、撮影賞、美術賞、音響賞、作曲賞、衣装デザイン賞、メイク・ヘアスタイリング賞
アルコール依存症に苦しみながらも、社会を鋭く風刺し続けた脚本家ハーマン・J・マンキウィッツ。オーソン・ウェルズ監督作品「市民ケーン」の脚本執筆を急ぐ彼の視点から、1930年代のハリウッドを描く。
『シカゴ7裁判』
作品賞、助演男優賞、脚本賞、撮影賞、編集賞、歌曲賞
1968年、民主党全国大会で平和裏に行われるはずだった抗議活動が、警察および州兵を相手にした暴動事件に発展してしまう。アビー・ホフマン、ジェリー・ルービン、トム・ヘイデン、ボビー・シールを含む抗議活動の主催者は、暴動を扇動したとして起訴され、その裁判は史上最も悪名高いものとなる。
『私というパズル』
主演女優賞
失った命への思いを胸に、生きる道を見つける女性を赤裸々に描いた、痛々しくも卓越した物語。 マーサとショーンはボストンに住む夫婦。間もなく揃って親になるはずが、自宅出産が想像し得ない悲劇に終わり2人の人生は一変。深い悲しみを乗り越えようとマーサは1年をかけた長い旅路につく。その中で彼女は、対立の絶えない夫や高圧的な母 (エレン・バースティン)との関係や、世間から誹謗中傷を浴びせられ、やがて法廷で対峙することになる助産師 (モリー・パーカー)にも向き合う。本作の監督はコルネル・ムンドルッツォ 、脚本はカタ・ヴェーベル、そして製作総指揮はマーティン・スコセッシが手がける。
Amazon Primeで配信中のノミネート作品
『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』
作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞、音響賞、編集賞
メタルドラマーのルーベンは、聴力を失い始める。医師に今後も悪化すると言われ、ミュージシャンとしての自分も人生も終わりだと考える。恋人のルーは元ドラッグ依存症のルーベンをろう者のコミュニティーに参加させ、再びドラッグに走ることを防ぎ、新しい人生に適応できることを願う。ルーベンはろう者コミュニティーで歓迎され、ありのままの自分を受け入れるが、新しい自分とこれまで歩んできた人生とのどちらを選ぶのか葛藤する。
劇場公開予定のノミネート作品
『ミナリ』
2021年3月19日(金)より全国公開
作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞
主人公は、韓国出身の移民の一家。父親は農業で成功したいと夢見てアメリカ南部のアーカンソー州の大地に広大な土地を買うが、現実は厳しく、一家には様々な困難と予想もしない事件が降りかかる。父親ジェイコブに「ウォーキング・デッド」のスティーヴン・ユァン。監督は、米国有力映画メディアIndieWireで「今年最高の監督10人」に、デヴィッド・フィンチャーやスパイク・リーと共に選ばれたリー・アイザック・チョン。
『ノマドランド』
2021年3月26日(金)公開
作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞
企業の倒産とともに、長年住み慣れた企業城下町の住処を失った60代女性ファーン。彼女の選択は、一台の車に全ての思い出を詰め込んで、車上生活者、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。大きな反響を生んだ原作ノンフィクションをもとに、そこで描かれる実在のノマドたちとともに見つめる今を生きる希望を、広大な西部の自然の中で探し求めるロードムービー。
『ファーザー』
2021年5月14日(金)全国公開
作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞、美術賞、編集賞
ロンドンで独り暮らしを送る 81 歳のアンソニーは記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配する介護人を拒否していた。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受ける。だが、それが事実なら、アンソニーの自宅に突然現れ、アンと結婚して 10 年以上になると語る、この見知らぬ男は誰だ? なぜ彼はここが自分とアンの家だと主張するのか? ひょっとして財産を奪う気か? そして、アンソニーのもう一人の娘、最愛のルーシーはどこに消えたのか? 現実と幻想の境界が崩れていく中、最後にアンソニーがたどり着いた〈真実〉とは――?
『プロミシング・ヤング・ウーマン』
2021年夏全国公開
作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞
キャシー(キャリー・マリガン)は【明るい未来が約束された若い女性(プロミシング・ヤング・ウーマン)】だと誰もが信じて疑わなかった。ある不可解な事件によって、不意にその有望な前途を奪われるまでは。平凡な生活を送っているかに見えるキャシーだったが、実はとてつもなく頭がキレて、クレバーで、皆の知らない“もうひとつの顔”を持っていた。夜ごと出掛ける彼女の謎の行動の、その裏には果たして一体何が――?
『アナザー・ラウンド(英題)』
2021年全国公開
監督賞、国際長編映画賞
マッツ・ミケルセンがカンヌ国際映画祭男優賞に輝き、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『偽りなき者』(2013年)のトマス・ヴィンターベア監督と再タッグ。また同作で共演したトマス・ボー・ラーセン、ラース・ランゼ、マグナス・ミランも再登板、さらにトビアス・リンホルムと監督が共同脚本を務めるなど盤石の布陣が敷かれており、否が応でも期待が高まる作品。
劇場公開・配信未定のノミネート作品
『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』
作品賞、助演男優賞、脚本賞、撮影賞、歌曲賞
若くてカリスマ的な活動家であるフレッド・ハンプトンは、ブラック・パンサー党のイリノイ州支部の議長に就任し、政府、FBI、シカゴ警察から直接狙われることになる。フレッド・ハンプトンは、途中で革命家の仲間と恋に落ち、オニールの魂を賭けた戦いが繰り広げられる――。
『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ(原題)』
主演女優賞
伝説のジャズシンガーであるビリー・ホリデイのキャリアの後半から1959年に亡くなるまでの期間に焦点を当て、その間、米国政府が彼女に対して行った執拗な迫害と麻薬所持で逮捕されるまでの経緯を描く。