『マッドマックス』シリーズの第4作目にして、アカデミー賞6冠など多数受賞した映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)。本作が完成に至るまで、制作が3回打ち切られたり、俳優同士が衝突したりなど紆余曲折があり、製作会社の幹部は困惑していたという。そんなほぼ不可能に近かったプロジェクトが、どのようにしてオスカーを受賞するアクション映画の傑作になったのか? キャストとスタッフ自身の言葉で語るインタビューが、この度ニューヨーク・タイムズで公開されている。
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マックスとフュリオサの配役はどう決定した?
本作は、通称ロードウォリアーの元警官マックス(トム・ハーディ)と獰猛なドライバーの大隊長フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が、復讐に燃える不死身のイモータン・ジョーと戦闘集団ウォーボーイズから逃れるために砂漠を横断しなければいけないというストーリー。一見するとシンプルに見えるが、撮影はそう簡単には進まなかったようだ。
監督のジョージ・ミラーは「長い間『マッドマックス』の新作のアイデアが浮かんでは、これ以上自分にできることはないと思っていました。でも、それが変わった瞬間のことは、今でもはっきり覚えています。ロサンゼルスで道を渡っていた時に、とてもシンプルなアイデアが頭に浮かんだのです。長い追跡劇で、もしマクガフィンが人間だったらどうだろう? と。一ヶ月後にオーストラリアに向かう機内でそのことを繰り返し考えていたのですが、着陸する頃にはプロデューサーのダグ・ミッチェルに電話をして いいアイデアが浮かんだ! と話したんです。」と製作の経緯について語った。
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ダグ・ミッチェルは、「最初の頃、女性の主演の候補者が何人か挙がってたんだ。ユマ・サーマンとかね。」と語る。ミラーは「その当時、シャーリーズ・セロンの話をしていたのを覚えてるよ。彼女のエージェントは、“彼女は出演に興味がない”と言っていたんだけど、10年以上経ってからセロンに直接その話をしたら、誰も出演について教えてくれなかった! と言ったんだ。」と当時を振り返る。セロンは「私は『マッドマックス』の映画を見て育った。南アフリカでも人気だったの。12歳の時に父と一緒に観たのを覚えている。だから、え、本気? 私、『マッドマックス』に出てみたい! って感じだったわ。」と当時について語っている。
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当時のプランでは『マッドマックス』シリーズのスター、メル・ギブソンが再び主演のマックスを演じることになり、20世紀フォックスと撮影することで話が進んでいたという。そして、2003年3月に開始予定だった撮影のために、何十台もの高価な車やセットが作られたそうだ。だが、ある出来事によって、状況は一変する。ミラーは「その後に、世界同時多発テロが起きてしまって、すべてが変わってしまった。保険もかけられないし、車の輸送もできない。製作することができなくなってしまったんだ。」と当時を振り返る。
制作の中止の後、ミラーは第79回アカデミー賞長編アニメ賞を受賞した映画『ハッピーフィート』(2006年)の監督をつとめた。その作品で興行的な成功をおさめたことで改めて『マッドマックス』の監督をさせて欲しいと、ワーナー・ブラザースを説得したそうだ。しかし、長年主演を務めたメル・ギブソンが50代になったこと、騒動を起こしてハリウッドで問題児扱いをされていたこともあり、ミラーとミッチェルは新しいマックスを探さざるを得なくなった。
ダグ・ミッチェルは「メルはご存知の通り、数々の障害を抱えていたんだ。 彼は非常に才能のある映画監督であり、素晴らしい俳優であり、時々悪魔が飛び出してくるけども、素敵な人だ。でも、その時点で彼は年を取りすぎていた。マックスを演じてもらうのは難しかったんだ。」と経緯を語る。そして彼らは、トム・ハーディに白羽の矢を立てる。
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ミラーはトムの印象について「メル・ギブソンと初めて会った時と同じような感覚で、トムに接していた。メルもトムも、ある種のエッジの効いた魅力、動物的なカリスマ性があって、とても魅力的に感じられたんだ。」と語る。トム・ハーディは当時について「その当時はまだ全然アクションをやったことがなかった。アクションの規模やボリュームは、今までに経験したことのないものだったよ。」と、自身にとって、チャレンジングな作品であったと明かす。
リアルで衝突してた⁉ 監督とトム・ハーディとシャーリーズ・セロンが告白
ミラーはこの作品について、難易度が高く、安全性に徹底的にこだわらないと何かがうまくいかなくなってしまい、それが一番の不安で、俳優たちの実際の作業プロセスについてもっと注意を払うべきだったと振り返る。俳優たち自身も、過酷でストレスフルな環境で、俳優同士で衝突していたことを赤裸々に明かしている。
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美女軍団“ワイブス(妻たち)”のトースト役ゾーイ・クラヴィッツ「トムは本当にイライラして怒ってることが多かった。セロンもそうだったけど、私はトムが一番ジョージ・ミラーに八つ当たりをしていたような気がして、見ていてガッカリしたわ。でも、トムを責めることはできないの。この作品に出る俳優たちには、多くのことが求められていたから。」
シャーリーズ・セロン「振り返ってみると、私には、トムがメル・ギブソンの代わりという大役をつとめる気持ちを理解してなかったし、十分に共感もできてなかったと思う。とても恐ろしいことよね! その上、私自身の恐怖心のせいで、みんな自分を守るために壁を作っていたと思う。これってあなたにとって怖いことでしょ、私にとっても怖いのよ。だからお互いに優しくしましょうね……ってね。不思議なのだけど、私たちはまさしく、演じるキャラクター本人のようになってた。全てがサバイバルになっていたのよ。」
トム・ハーディ「同感だね。今思えば、自分の手に負えない部分が多々あったと思う。お互いのプレッシャーに圧倒されていた。セロンの求めていたものは、おそらく俺の中にいるであろう、より経験豊富なパートナーだった。それってごまかしのきかないものだよね。年を取って醜くなった今なら、ちゃんと立派にこなすことができると思いたいよ。」
それぞれの苦悩を経て生み出された本作の出来栄えはご存知の通り。全世界で約400億円を稼ぎ、最優秀作品賞、最優秀監督賞を含む10のアカデミー賞にノミネートされ、編集、プロダクションデザイン、衣装デザインなどの部門で6つの部門で受賞するという素晴らしい成果を生んだ。
この秘話をきっかけにもう一度、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観なおしてみるのも面白いはず!
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
石油も水も尽きかけたMADな世界。生き残りたいなら走り続けろ。
サイコーにMADな映画がやってくる。始まったが最後、息つく暇は微塵もない。ノンストップ、ハイスピードの二輪、四輪入り乱れる驚愕のカーバトルが、異常なまでの興奮を巻き起こす!
制作年: | 2015 |
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