「最悪の結末」を避けるために
いわゆる“旅tuber”的な動画配信生活もギャビーを“籠の鳥”状態にするためだったのではないかと穿ってしまうが、同時に2人の気まずい空気もしっかり収められていて、それはブライアンにとっては不都合でもあっただろう。短くカットアップされた映像だけでは知り得ない、日に日に歪んでいく関係をなんとか補正しようとするような必死さばかりが伝わってくる。
同事件についてはPrimeVideでもドキュメンタリー『ギャビー・ペティート -インフルエンサー失踪殺害事件-』が配信されていて、その注目度の高さがうかがえる。“どこにでもいそうなカップル”は、おそらく共依存関係にあっただろう。それは特殊なことではなく私たち自身や家族、近しい人々も陥る可能性があり、その最悪のパターンの一つがギャビーたちの迎えた結末だった。

American Murder: Gabby Petito. (L) Gabby Petito in American Murder: Gabby Petito. Cr. Courtesy of Netflix © 2025
加熱するニュース報道と後手に回り続けた捜査
事件発生当時、本国では大手メディアが連日ギャビー失踪を報じ、第一容疑者とされながら姿をくらましたブライアンを全米が見張っているような状況だった。それにもかかわらず2人の行方はわからず、ギャビーの無邪気な笑顔を捉えた写真が人々の不安をつのらせた。同時に人種差による対応の違いも問題視され、ペティート家と同じく娘の失踪を悲しむ有色人種の家族の存在と、早々に打ち切られてしまった杜撰な捜査が取り沙汰された。ギャビーの事件に対して大規模な捜索が行われ報道が加熱しているのは白人カップルであることと無関係なのか、と。

Netflixドキュメンタリー『アメリカン・マーダー:ギャビー・ペティート殺人事件』独占配信中
とはいえ当時を冷静に振り返るとFBIの捜査にすらツッコミどころが多く、痴話喧嘩の延長と捉えていたのでは? と穿ってしまうほど。ただリアルタイムでニュースを負っていた人ならばゾクッと背筋が寒くなるような瞬間もあり、他のハイカーなどから情報が続々寄せられたことを振り返る最終エピソードなどは、まるでクライムサスペンスのような禍々しさがある。
Netflixドキュメンタリー『アメリカン・マーダー:ギャビー・ペティート殺人事件』独占配信中