覚えてる? ピーウィー・ハーマンの衝撃
ポール・ルーベンスという名を聞いて、すぐに「ピーウィー・ハーマン」を連想する日本人は多くないだろう。コメディアンのルーベンスが生み出したこのキャラクターは爆発的な人気を博し、すぐに看板番組を獲得。映画作品も複数作られた。その一つが『ピーウィーの大冒険』(1985年)だ。
『ピーウィーの大冒険』はティム・バートンの監督キャリア最初期の作品であり、ルーベンス自身が彼を抜擢したという。ピーウィーのキャラをなんとなく知っているだけの者としては、彼を主人公に一体どんな物語を……? と訝ってしまうが、オープニングタイトルからバートンらしさが全開で、ダニー・エルフマンの劇伴にも安心してしまう。
グレンチェックのぴちぴちスーツにつんつるてんのズボン、蝶ネクタイ姿のピーウィーが大切な“赤い自転車”を盗まれたから、さあ大変。インチキ占い師の占いで、はるばるテキサス州アラモの地の果てまで自転車を捜しに行くことに。ピーウィーの果てしなく、とんでもない冒険が始まる!
アーティストの創造性と世間的イメージの乖離
ピーウィーはルーベンスのアルターエゴであり、世界的な知名度を得てからはルーベンスとしてメディアに登場することは殆どなかった。『~大冒険』のヒット後は彼の名を冠した朝の子供番組も放送されたが、そんな人気絶頂の1991年にポルノ映画館にて公然わいせつ罪(下半身を露出した?)で逮捕されてしまう。
急速にキャリアが低迷しトーク番組などでも散々ネタにされたものの、俳優仲間や関係者、ファンたちの多くはルーベンスの支持を表明。本人も容疑を否定していたが、子ども向け番組やおもちゃで彼の顔が大きく認知されていたこともあり、後の活動に大きな影を落とすことになる。
その後はほそぼそと活動し、バートン監督の『バットマン・リターンズ』(1992年)で悪役ペンギンの父コブルボット卿なども演じていたルーベンスだが、2000年代に入って再び逮捕。ビザールなアンティーク品のコレクターであった彼には“違法ポルノの所持”という罪は寝耳に水だったのではないだろうか。
癌を患っていたルーベンスは呼吸不全により2023年に死去。今でこそ映像ソフトの再発などでピーウィーの活躍はアーカイブ化されているが、TVで観られる機会は極端に少なくなった。現在、CS映画専門チャンネル ムービープラスで『ピーウィーの大冒険』が放送中なので、改めてルーベンスの生み出した稀代の名キャラクターを見つめ直してみよう。
『ピーウィーの大冒険』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2025年3月放送