『はりぼて』『裸のムラ』の五百旗頭幸男監督の最新ドキュメンタリー映画『能登デモクラシー』が完成、2025年5月17日(土)から[東京]ポレポレ東中野、[大阪]第七藝術劇場、5月24日(土)から[金沢]シネモンドほかにて劇場公開することが決定した。
五百旗頭幸男監督の真骨頂にして新境地といえる作品
本作は能登半島の中央に位置する石川県穴水町が舞台のドキュメンタリー。人口減少の最終段階に入った穴水町で滝井元之さんは手書き新聞「紡ぐ」を発行し町の未来に警鐘を鳴らし続けている。石川テレビのクルーが町民や惰性と忖度蔓延る役場・議会に取材を重ねていくなかで、能登半島地震が発生。町の暮らしはどうなるのか? 政治、メディアの在るべき姿とは? 長期にわたって町と人びとの営みをつぶさに見つめた本作は、五百旗頭幸男監督の真骨頂にして新境地といえる作品だ。
光の当たらないところに光を当てる
能登半島の中央に位置する石川県穴水町。人口は7000人を下回り、若者と高齢者の数がともに減りゆく「人口減少の最終段階」に入っている。コンパクトシティを推進する町の中心部から悪路を進んだ限界集落に暮らす元・中学校教師の滝井元之さん。2020年から手書きの新聞「紡ぐ」を発行し、利益誘導型の政策や町の未来に警鐘を鳴らし続けている。穏やかな穴水湾をのぞむこの町の伝統漁法「ボラ待ちやぐら」。我慢強さは町民性ともいえるが、滝井さんはこう記す「何もしなければ、何も変わらない」。石川テレビのクルーは市井からの眼差しにローカルメディアの存在意義を重ねながら、惰性と忖度蔓延る役場と町議会の関係の歪さを浮き彫りにしていく。
2024年元旦、能登半島地震が発生した
カメラは思わぬ事態に見舞われた町と人びとの営みをつぶさに見つめる。そして、同年5月に放送されたテレビ版が、穴水に大きな風穴を開けた。「このままでは町がなくなる」。声を寄せ、届け、耳を傾ける。映画は確かな変化の芽吹きを映し出していくのだが――。
監督は石川テレビの五百旗頭幸男。『はりぼて』では富山市議会の不正を暴き、市議が次々とドミノ辞職。ムラ社会の父権的な空気をあぶり出した『裸のムラ』は、映画公開後に馳浩石川県知事の定例会見拒否問題にまで発展した。映画の終盤、ここぞとばかりに、まことしやかに囁かれる穴水町最大の“タブー”に斬り込んでいく五百旗頭。投げかけた言葉に込めた思いとは。この町で、この国で、果たして民主主義は生き残れるのか。一縷の望みに賭ける穴水からのラブレター!
【五百旗頭幸男監督メッセージ】
いつからか記者会見は劇場化し、手っ取り早くビューを稼ぐためのコンテンツと化した。映画の舞台、穴水町には定例会見がない。NHK と民放テレビの取材がほぼ入らず、「ニュース砂漠」が近づく過疎の町で、権力監視の役割を最も担い、町民の信頼が最も厚いメディアは、80歳の元教師が発行する手書き新聞だった。配布は月2回、部数は500部。「バズる」とは隔絶した世界線に、地域を愛し、地道に信頼を紡ぐオールドメディアの姿がある。