日本文学界の巨人・筒井康隆の同名小説を、監督・吉田大八(『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』)が映画化。映画『敵』が、1月17日(金)より公開される。このたび本作が、「第18回アジア・フィルム・アワード(AFA)」にて、日本映画としては最多、作品賞、監督賞(吉田大八監督)、主演男優賞(長塚京三)、助演女優賞(瀧内公美)、撮影賞(四宮秀俊)、衣装賞(宮本茉莉)の計6部門にノミネートされた。
長塚京三、12年ぶりの主演映画
本作の主演には、『ザ・中学教師』(92)で初主演を飾り、『ひき逃げファミリー』(92)で「第47回毎日映画コンクール」男優主演賞、『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(97)で「第21回日本アカデミー賞」優秀主演男優賞するなど、1974年にフランスで俳優デビューしてから実に50年、名優として日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚京三。2013年公開の『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』以来、12年ぶりの主演映画となる。
“理想の上司像”の印象も強い長塚が、本作では元大学教授・渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子には瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配する妻役には黒沢あすか、バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩ら実力派俳優陣が脇を固める。
小説「虚人たち」で泉鏡花文学賞を、「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞を受賞するなど受賞歴多数、「時をかける少女」などでも知られる原作の筒井康隆。文壇・メディアとの戦いを経て、生き抜いてきた自身が描く老人文学の決定版である「敵」の映画化にあたり、筒井は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を絶賛。吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました」と自身の新境地を見せる。
「アジア・フィルム・アワード」は、2007年に香港国際映画協会によって設立され、“アジア全域版アカデミー賞”とも言われており、これまで『パラサイト 半地下の家族』(19/ポン・ジュノ監督)や『ドライブ・マイ・カー』(21/濱口竜介監督)など、世界中の映画祭や賞レースを席巻した作品が受賞している。『敵』についても、「第37回東京国際映画祭」にて東京グランプリ/最優秀男優賞/最優秀監督賞の三冠を達成し、その後、昨年11月に行われた「台北金馬映画祭」Windows On Asia部門に選出、12月には「上海国際映画祭」Japanese Weekに招待され、数千人の劇場が一瞬で埋まるなど、国内外の映画祭で絶賛の渦を巻き起こしている。
今回は、アジア25の国と地域より30作品のノミネート(全16部門)があり、本作は作品賞や監督賞を含む、6部門でのノミネートとなった。過去に同映画賞で6部門でのノミネートとなった作品には、「第71回カンヌ国際映画祭」で最高賞のパルムドールを受賞した『万引き家族』(18/是枝裕和監督)や、「第80回ヴェネツィア国際映画祭」にて銀獅子賞を受賞した『悪は存在しない』(23/濱口竜介監督)がある。
なお今後も、「AKI-NO 日本映画祭」(イスラエル)、「ヘルシンキ・シネアジア映画祭」(フィンランド)、「香港国際映画祭」(香港)、「アイルランド日本映画祭」(アイルランド)、「ウーディネ・ファーイースト映画祭」(イタリア)など、世界中の映画祭への出品が決定している。アジア・フィルム・アワードの授賞式は、3月16日に香港で開催予定。
素晴らしいアジア映画のお祭りにお招きいただき、本当に光栄です。苦労を共にしてきた俳優やスタッフたちと喜びたいと思います。もちろんまだ何かを貰ったわけではありませんが、数ヶ月後の楽しい予定がひとつ決まっただけでもだいぶ気が楽になりました。関係者一同浮かれそうな気持ちをグッと抑えて、1月17日の公開へ向け鋭意宣伝活動中です。何卒よろしくお願いします。
(吉田大八監督)
『敵』は1月17日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開