女性になった麻薬王と彼女との出会いで運命が動き出す3人の女性たちを描いた、魂を撃ち抜く至極のエンターテインメント作品『エミリア・ペレス(原題:Emilia Perez)』が、本年度最多ノミネートとなった「第82回ゴールデングローブ賞」において、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)、非英語作品賞、主題歌賞(El Mal)最多4部門を受賞する快挙を達成した。
「SHOGUN 将軍」と並んで最多4部門受賞の快挙!
出演は、ハリウッド超大作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのゾーイ・サルダナ、自身もトランスジェンダー女性であるカルラ・ソフィア・ガスコン、全米の若者から絶大な人気を誇るセレーナ・ゴメス、国際的に活躍するメキシコ出身のアドリアーナ・パス。今年のカンヌ国際映画祭で審査委員長を務めたグレタ・ガーウィグ(『バービー』監督)に「それぞれが際立っていたが、一緒になると超越していた」と称えられ、カンヌ国際映画祭女優賞をアンサンブル受賞。監督と脚本を手掛けたのは、『ディーパンの闘い』でカンヌ映画祭パルムドール、『ゴールデン・リバー』でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞するなど、世界で高く評価されているフランスの名匠ジャック・オーディアール。72歳のベテラン監督とは思えない瑞々しい感性で新境地を切り開き、破天荒なストーリーをミュージカル仕立ての圧巻のエンターテインメントへと昇華させた。
制作を務めるのは、フランスのラグジュアリーブランド「サンローラン」より誕生した映画制作部門「サンローラン プロダクション」。クリエイティブ・ディレクター アンソニー・ヴァカレロがサンローランのために構想し、ラグジュアリーブランドとして初めて本格的な映画制作を行うことを発表した本部門は、これまでウォン・カーウァイやペドロ・アルモドバル、ジャン=リュック・ゴダールなど世界を代表する巨匠監督とのタッグによる作品を次々と発表。そして、満を持しての長編第一作目となる本作で大躍進を遂げた。
ゴールデングローブ賞では、昨年度映画業界を大いに賑わせた『バービー』を抜いて、コメディ・ミュージカル部門で歴代最多ノミネート記録を樹立。最大の注目作として大きな話題を呼び、その勢いのままに最多4部門で受賞となった。
ゴールデングローブ賞で初受賞となったゾーイ・サルダナは、「ゴールデングローブ賞が私たちの映画を称え、『エミリア・ペレス』の女性たちに敬意を表してくれたことに、心から感謝します。私にとって初めてのことで、この瞬間をセレーナ(・ゴメス)やカルラ(・ソフィア・ガスコン)、ジャック(・オーディアール)、そして他のノミネート者の皆さんと分かち合えていることを、本当に光栄に思っています。(中略)そしてカルラ、あなた以外にエミリア・ペレスを演じられる人はいません。誰も。あなたは唯一無二です。あなたは唯一無二です…」と感無量の面持ちでスピーチ。
そして、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞に際しては、主演を務めたカルラ・ソフィア・ガスコンが、「光は常に闇に勝つ。私たちを牢屋に入れたり、殴ったりすることはできても、私たちの魂や抵抗する気持ち、アイデンティティを奪うことは決してできない。私は皆さんに、声を上げて、そして言って欲しいのです。「私は勝った」と。「私は私であり、あなた方が望む私ではない」と、トランスジェンダー女性としての自身のアイデンティティを重ねて、万感の想いを語った。
同じくアカデミー賞前哨戦として重要な位置につける北米の放送映画批評家協会が選ぶクリティクス・チョイス・アワードでは、作品賞、監督賞、主演女優賞など主要部門を含む10の部門でノミネート、そして、アカデミー賞では国際長編映画賞など5部門でショートリスト入りしたことが発表され、快進撃が続く。いよいよ1月17日(現地時間)には主要部門を含むアカデミー賞ノミネート作品が、3月2日には受賞結果が発表となる。今年の映画界を大いに盛り上げる本作の行方、惜しくも今回受賞を逃したカルラ・ソフィア・ガスコンが、アカデミー賞でトランスジェンダー女性として史上初の女優賞受賞となるか、大きな期待が寄せられている。
『エミリア・ペレス』は3月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開