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クリスチャン・ベイルの代表作は?
――そう聞かれたら、あなたはどの作品を挙げるだろうか。<ガン=カタ>を発明したSFアクション『リベリオン』(2002年)か、驚異的な肉体改造を披露した『マシニスト』(2004年)か、そこからの激マッチョ化で驚かせた『ダークナイト』3部作(2005~2012年)か、サイコな見栄っ張りヤンエグを血濡れで怪演した『アメリカン・サイコ』(2000年)か、はたまた子役時代の『太陽の帝国』(1987年)か……。
もちろん『アメリカン・ハッスル』(2013年)や『バイス』(2018年)など外から中まで役になりきった近作も大きな話題を呼んだが、見た感じベイルまんまながら並々ならぬ熱量を発していた同時期の作品があった。2013年のスコット・クーパー監督作『ファーナス/訣別の朝』だ。
二度は観たくない、しかし歴史的名作
溶鉱炉が立ち並ぶペンシルベニア州ブラドック。この寂れた鉄鋼の町で生まれ育ったラッセルは、製鉄所で働きながら老父の面倒を見ている。イラク戦争で心に傷を負った弟のことも心配だが、恋人リナに支えられ慎ましくも愛情に満ちた日々を送っていた。だが、そんな彼の暮らしがある日突然、暗転する――。
本作でベイルが演じる主人公ラッセルたちが暮らすペンシルバニア州の街は、貧しさにあえぐ白人たちの吹き溜まりのように描かれている。いつか生活が好転することを願いながら製鉄所で真面目に働くラッセルだが、現実は悪い方向にゴロゴロと転がっていく。
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