実際の詐欺事件を題材にユーモアとサスペンスを両立
本作がモチーフにしたのは、日本でも毎日のように被害が報じられている「振り込め詐欺事件」。とくに高齢者をターゲットに、身内を装って大金の振込を要求したり、手堅い投資話を持ちかけたりして高額の振込に誘導する詐欺犯罪だ。家族のピンチを救いたい、子や孫に資産を遺したいと願う人々の心のスキマを狙った許しがたい手口である。
そして本作では、振り込め詐欺に遭った主人公ドッキ(完全に一般市民)のもとに、詐欺組織のメンバーから「警察へ通報してほしい」とSOSの連絡が……という、スルー不可避のツカミから物語がフル回転していく。自身が詐欺被害で全財産を失うという絶望の中にいながらも、その状況を積極的に乗り越えようとするドッキ(ラ・ミラン)、犯罪行為のど真ん中で必死で密告する青年ジェミン(コンミョン)は、この状況をいかにクリアしていくのか――?
私たちの記憶に新しい、今も世界的な問題となっている犯罪をモチーフに、ユーモアをまじえて一級のサスペンスに仕上げてしまうあたりは韓国映画の真骨頂。すさまじい行動力を持つアジュンマ、ドッキを演じるのは『高速道路家族』のベテラン女優ラ・ミラン。詐欺組織の一員ジェミンを演じるのは、『エクストリーム・ジョブ』の末っ子刑事役をはじめ俳優としても大活躍をとげるアイドル出身のコンミョンだ。
『地面師たち』ファンも必見? 巧みな脚本で詐欺事件を映画化
本作のベースとなった2016年の事件は、当時かなり大きく報じられた。かつて日本では「オレオレ詐欺」と呼ばれていたタイプの詐欺が、徐々に拠点を中国~韓国など海外に広げていた時期だ。また同年、韓国では有名俳優が放送作家から巨額の投資金を持ち逃げされた、なんて事件もあった。
そして韓国映画界では、イ・ビョンホンとカン・ドンウォン共演の映画『MASTER/マスター』(2016年)やヒョンビン主演の『スウィンダラーズ』(2017年)、チャン・グンソク主演ドラマ『餌<ミッキ>』(2023年)などでも、ある巨大詐欺事件が題材にされてきた。身近な問題をエンタメ化によって広く知らしめようという気概も、韓国映画の大きな魅力である。
Netflixオリジナルシリーズ『地面師たち』が大ヒットした今、隣人韓国の詐欺事情をがっつりレクチャーしてくれるという意味でも、『市民捜査官ドッキ』は要注目の作品だ。
『市民捜査官ドッキ』は2024年12月13日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開
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