何かを隠してる…? パディとキアラ夫妻に注目
旅行中に意気投合したパトリック一家に自宅に招待され、週末を一緒に過ごすことになるベン一家。かれらを手厚く“おもてなし”するのは家の主であり、情欲的で“全て”のことに関して強い意見を持つ、昔ながらの男らしさを持ったパトリックと、一見すると年相応に見えないほど若く、温かく魅力的な人柄を持つ妻キアラだ。
二人は生まれつき障害を持つ息子とともに、人里離れた大自然に囲まれた農場で自給自足の暮らしを悠々自適に送っている。パトリックを演じたジェームズ・マカヴォイが「とてもリアルで情熱的に描かれているんだ。誰もが憧れる夫婦関係さ。あまりに自由で、もはや宇宙人だよ。堅苦しい日常や決断から解き放たれているように見える」と語るように、長年連れ添っているパトリックとキアラの夫婦関係は非常に良好で、ベン一家の前でもそのラブラブぶりを隠すことなく見せつけるほどだ。
また、穏やかで愛情深い妻のキアラは、パトリックの騒々しい性格を和らげる存在であり、二人は絶妙なバランスのとれた夫婦として描かれている。しかし、キアラ役のアシュリン・フランチオージは、「パディとキアラ、二人の関係の描き方はとても魅力的だと思う。彼らは互いに愛し合っていて、相性の良さは明らかだけど、二人とも自分の意志ではコントロールできない深い闇を抱えている」と、彼らが単なる理想的な夫婦ではなく、内に秘めた複雑さを併せ持った関係であることを明かしている。
「彼らは、いろいろな意味で卑劣なんだ」
マカヴォイは、フランチオージ、ジェームズ・ワトキンス監督と協力し、パトリックとキアラの関係を作り上げていったという。その過程で、この役にさらなる奥行きを見出したというマカヴォイはこのように語っている。
パディとキアラは言葉では言い表せない情熱を持った、文字通りクレイジーな夫婦で、悩みを抱えているように見えたダルトン夫妻から、希望と闇を照らす灯台のような存在として見られていた。
また脚本にもあったが、パディとキアラについての真実の核心とも言えることを、リハーサルや現場で私たちはもっともっと掘り下げていった。そう、彼らはいろいろな意味で卑劣なんだ。でも彼らはお互いを愛し合い、その愛は本物で、むしろ健全ですらある。
ベン一家のような一見「幸せな家族」との対比を通じて、作品には豊かな夫婦関係や本当の対立が生みだされている。現実に起こりうる要素を巧みに取り入れることで、観客を物語へと一層深く引き込んでいるのだ。
パトリック一家は誰もが憧れる理想の家族のように見え、ベン一家にも大きな影響を与えていく。しかし、同時にその背後に秘められた闇が明らかとなっていき……。彼らの特別な“おもてなし”の裏側に隠された真実の行方を、映画館で目撃しよう。
『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』は2024年12月13日(金)より全国公開