ビーストの恐怖は“アナログ”だからこそ
今回、チョンシー・ビーストはCGではなく実際の着ぐるみを製作して撮影が行われた。プロデューサーのジェイソン・ブラムは、アナログ手法にこだわった理由についてこう語る。
ホラー作品のエンターテインメント的な価値は恐怖描写で決まるところが大きい。恐怖が現実的であればあるほど、観客はより作品に引き込まれる。CGによる描写が成功する場合もあるが、リアルな体験を求める観客にはコンピューターが生み出したものよりも、アナログ的な方法が響くことが多いんだ。
そして映像の冒頭では、監督を務めたジェフ・ワドロウや製作スタッフのナビゲートと共に、チョンシー・ビーストの巨大な着ぐるみのパーツが紹介される。
ビーストの「中の人」は?身長2m超の『プレデター』俳優が大活躍
「俳優と人形師が手を組めば、化け物がリアルになり観客は恐怖に浸れるはず」とブラムが語るように、チョンシー・ビーストの操作にも独自の工夫が加えられた。着ぐるみを装着してチョンシー・ビーストを演じたのは、『プレデター:ザ・プレイ』(2022年)でプレデター役を務めた俳優、デイン・ディリーグロ。あまりにも恐ろしいクソデカ熊モンスターに命を吹き込むキャストとして、身長2メートル超えのスタントマンでもあるディリーグロはまさに適任だ。
さらに映像では、着ぐるみを装着中の姿や、テイラー役のテーゲン・バーンズと仲良く2ショットを撮るオフショットなども映し出される。ディリーグロは、「高性能な芸術作品を着させてもらったよ。大勢が携わった力作だ」と複雑な製作工程が求められた製作チームへの敬意を表しつつ、「僕は操るだけの手に過ぎない」と謙虚な人柄を伺わせる。メカニカルデザインの責任者であるリチャード・ランドンも、「デインは自分から積極的に質問して、監督が求めるものを見事に表現した」と彼の熱心な取り組みを評価している。
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熟練の人形師たちが“ビーストの顔面”をグリグリ動かす!
高度な技術と細やかな操作、そして製作チームとディリーグロの密接な連携によって見事に実現された、チョンシー・ビーストの驚異的なリアリティ。さらに細かな“感情表現”ができるよう、実物大の頭部には22台ものサーボモーター(※細かな指示と制御が可能なモーター)が組み込まれ、4人の人形師が無線操縦の通信機を使い、口、あご、目、耳部分を操作することで、より精密で生々しい動きが実現された。
ディリーグロは「化け物が叫ぶ時はタイミングを体で示した。完璧に息の合った仲間だ」と、人形師たちとの綿密な連携プレーによって撮影されたことを明かす。そして映像の最後には、チョンシー・ビーストが鋭い牙を剥き出しにし、腕を大きく広げて威嚇する恐ろしい姿が捉えられている。
このように俳優、人形師、そしてスタッフ全員が一丸となって製作・撮影されたチョンシー・ビーストは、高度な技術と人間の技巧の融合によって圧倒的な存在感をもたらし、観客の感情を揺さぶるリアルな恐怖を生み出した。ブラムが「俳優と人形師が協力してクリーチャーに息を吹き込む手法が、観客から嘘のない反応を一番引き出すことができるんだ」と自信たっぷりに製作のコダワリをアピールするのもうなずける、ため息が漏れるほど見事な意匠だ。
世代を問わず愛される“キュート”の代名詞テディベアが、巨大で恐ろしい怪物へと変貌を遂げる異様な一部始終を、ぜひ劇場の大スクリーンで体験し震えてほしい。
『イマジナリー』は2024年11月8日(金)より全国公開中