キャストが続々負傷!『フルメタル・ジャケット』
『フルメタル・ジャケット』は、キューブリックがベトナム戦争を舞台に新兵たちの厳しい訓練と彼らが赴いた戦場での体験を描いた戦争ドラマ。ベトナム戦争集結から10年ほどで映画化された当時は衝撃もひとしおだったかと思うが、2024年に初鑑賞しても数日は立ち直れないほどのショックを受けるはずだ。
悪名高いハートマン軍曹を演じたR・リー・アーメイは撮影中に事故で片側の肋骨がすべて折れた(その間は制作自体がストップ)とか、ここには書けないエグいセリフの多くはアドリブ(諸説あり)だとか、彼だけでも信じられないような逸話が満載。もちろん30キロ以上も体重を増やして撮影に挑んだヴィンセント・ドノフリオもハードなエピソードを持っていて、そんなキャスト陣のバイブスが物語にいっそう重みを与えている(ように見えてしまう)。
キャストの貢献あってこそ!『シャイニング』
主演ジャック・ニコルソンの臨終顔がイジられがちな『シャイニング』だが、いまだその衝撃を超えるスリラーは出てきていないと言っても過言ではない名作。ニコルソンは狂気的な演技を引き出すために嫌がらせのような待遇を受けたり、妻ウェンディを演じたシェリー・デュヴァルはストレスのあまり神経衰弱や脱毛に悩まされた等々、にわかには信じがたい伝説が山ほどある。
ときには数十回もテイクを重ねることで知られるキューブリックだけに、キャスト陣が心身ともにかなり“削られた”ことは事実のようだ。しかしニコルソンらキャスト陣の熱演はもちろん、演出やセリフのアイデアが採用された例も少なくなく、彼らの貢献あっての作品であることは間違いない。ちなみに原作者スティーヴン・キングは本作の出来に満足しておらず、1997年に自ら原作に忠実なTVシリーズを手掛けている。
やっと時代が追いついた?『2001年宇宙の旅』
70年代以降のあらゆる宇宙、“SF的”描写に影響を与えているであろう『2001年宇宙の旅』だが、公開時は興行的に伸び悩んでいた。しかし劇場には徐々若者が足を運ぶようになり、そこには”幻覚剤”の存在があったようだ。ドラッグをキメた状態で本作を観ると……というクチコミが広まったのだと思われるが、今となってはそんな逸話は必要ないほど「絶対に観るべき名作」として、すっかり浸透している。
「難解な映画」の代名詞となっている本作も、改めて観るとそれほど難解さは感じないかもしれない。様々な考察・解説を経たことはもちろんだが、現代を生きる私たちの日常は60年代の“空想科学”に追いつきつつあるからだ。とはいえ本作が現代~未来の様々を予言していたことは間違いなく、それは人工知能「HAL 9000」の存在が象徴している。インターネットの登場を予見し、通信衛星の基本原理を発明した原作者/脚本家アーサー・C・クラーク恐るべし。
「ワーナー ブラザース劇場:キューブリック監督特集」はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年11月放送