サスペンス&スーパーナチュラルな“全部盛り”ロマンス
海辺の田舎町に流れ着いた謎の女性ケイティと、妻を亡くしたシングルファーザー・アレックスの恋の行方をミステリアスに描く本作。間違いなくロマンス映画なのにミステリアスと謳っているのは、ケイティの「過去」を執拗にチラつかせる演出ゆえ。終盤まで出し惜しみしても良いようなものだが、冒頭からして逃走らしきシーンで始まるので適当に濁すわけにもいかない。
とはいえ主なロケ地は米サウスポートとノースカロライナ州ウィルミントンとのことで、まさに風光明媚という言葉がぴったりの美しさ。そこで繰り広げられる魅力的な男女の恋、無邪気な子どもたちや優しい住人たちとの微笑ましい交流……。その心地よさにまったり浸っていたくなるが、ちょいちょい“ミステリアス”が横槍を入れてくる。ケイティが悩まされるフラッシュバックと、彼女を追う刑事の存在だ。
中盤過ぎまではスパークス映画の“記号”が散りばめられているが、終盤に入るとケイティが“恐怖の対象”と対峙する展開へ。「あれ、ロマンス映画を観てたんじゃなかったっけ?」と思わずにいられない本格サスペンス劇が繰り広げられ、さらに「あの人、結局何者だったの?」という大きな爆弾が最後にすべての感慨をかっさらっていく……。
ゲップが出るほどニコラス・スパークス! その共通点とは?
さて、そんな『セイフ ヘイヴン』の原作者であるスパークスだが、1999年の『メッセージ・イン・ア・ボトル』から2016年の『きみがくれた物語』まで11本の映画化作品のストーリー構成が、かなり似通っている。ついでに言うと、各作品のポスタービジュアル(パケ写)の構図もほとんど同じ。向かい合う男女のビジュアルを見かけると、もしやスパークス映画か!? と勘ぐってしまうほどだ。
男優のキャスティングにも共通点があり、ケヴィン・コスナーやリチャード・ギアらベテランはさておき、 リアム・ヘムズワース、チャニング・テイタム、ザック・エフロン、ジェームズ・マースデン、スコット・イーストウッド、ベンジャミン・ウォーカーと、ガタイの良いイケメン白人がズラリ。この『セイフ ヘイヴン』のジョシュ・デュアメルも同じ系統なのだが、映画的な都合もあるにせよスパークス原作におけるメンズが持つバイブスを可視化した結果でもあるだろう。
ロマンスものの大家であるスパークスの“ネタ化”は世界共通であるらしく、たしかに今観るとテンプレ的な構成が気にならなくもないが、そのぶん色々と難しく考えず観られるのが魅力ではある。とくに『セイフ ヘイヴン』は凄まじいびっくり展開があるし、現実逃避したい気分のときにサクッと観たい、かつ一粒で二度、三度もおいしいスリルフルな恋愛サスペンス映画だ。
CS映画専門チャンネル ムービープラスでは『セイフ ヘイヴン』が2024年11月に、『メッセージ・イン・ア・ボトル』が12月に放送されるので、ぜひご自宅でスパークスしてみては。