日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督(『月』『舟を編む』)の最新作『本心』が、11月8日(金)より全国公開中。このたび、池松演じる主人公・石川朔也と、仲野演じるアバターデザイナー・イフィーの“本心が見えない”対話シーンが解禁となった。
既に“現実”となりつつある“少し先の将来”
原作は、映画化も話題となった「ある男」の平野啓一郎による傑作長編小説「本心」。キャストには、近年ますます活動領域を拡張している俳優・池松壮亮を主演に迎え、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子ら日本の映画界を牽引する豪華実力派俳優陣が集結した。
本作は、今からさらにデジタル化が進み、“リアル”と“ヴァーチャル”の境界が曖昧になった少し先の将来が舞台。亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせるという、テクノロジーの未知の領域に足を踏み入れた青年・石川朔也(池松壮亮)と、彼を取り巻く人間の〈心〉と〈本質〉に迫る革新的なヒューマンミステリー。
無邪気に笑うイフィー、愚直に答える朔也…これは“本心”での会話なのか?
10代の頃からの旧知の仲であり、2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」では秀吉と秀長の兄弟役を演じることが決定している2人。公私ともに信頼関係で結ばれる彼らが、本作で一足早く、二人芝居で“静かなる熱演”を魅せている。淡々としたシーンでありながらも、どこか緊迫感に満ちた映像となっており、そこには羨望、侮蔑、嫉妬、困惑、そして、愛…人間が心の奥底に隠し持っている感情、言葉にはしない“本心”が詰め込まれている。
幸せそうに見えた母・秋子がなぜ自ら死を望んだのか…母親の本心を探るため、朔也は不安を抱えながらも、AIに生前の母の情報を集約させ人格を形成するVF(ヴァーチャル・フィギュア)を利用し、仮想空間上に母を蘇らせる選択をする。生前の秋子の親友・三好彩花(三吉彩花)の協力もあり、互いに支え合いながら穏やかな日常を取り戻そうとする朔也。しかし、VFの母は朔也の知らない一面を見せ、また目まぐるしく進化する時代にも翻弄され続け、朔也の心は次第に混乱していく…。そんなある日、とある事件で“結果的に”人助けをしたことになった朔也は、SNSに動画が拡散され、英雄として祭り上げられることに…。
映像で映し出されるのは、そんな朔也を気に入り彼を雇用した、世界的に有名なアバターデザイナー イフィーとのシーン。社会的な格差を実感していた朔也は、神妙な面持ちでたまらず「僕は英雄でも何でもなくて、あの時はあそこにいた人に暴力をふるって…」と事件の真相を告白してしまう。それに対しイフィーは、「朔也さんはいずれ本当の事を話してくれると思ってました」と笑みを浮かべ、「僕はあなたの目が好きです。嘘をつかない目をしているから。だから聞くんですよ、本音で答えてください。三好さん…彩花さんのことが好きになってしまいました。朔也さんも…ですよね」と問い正す。朔也の答えは、「いえ…ただの同居人です」…。
さらにイフィーは続ける。「僕と一緒に暮らせば彼女の生活は保障されます。朔也さんも、そう思いますよね」——この言葉で、感情を呑込み、無言で頷く朔也。「それなら、僕と彩花さんの仲を取り持ってくれませんか?」——「はい」。口から出る言葉とは裏腹に表情は曇り、“本心を言えない”、或いは“自分の本心がわからない”朔也。そして、「他の金持ちと違って、あなたたちの苦しみを理解できるんです。僕だけは…」と笑顔を浮かべ、最後まで“本心を見せない”イフィー。両者の心の奥底に潜む、それぞれの本心とは—?
仲野とのシーンについて池松は、「朔也とイフィーは、朔也がイフィーだったかもしれない、イフィーが朔也だったかもしれない、というようなとても親和性の高い関係性だと思います。今作において最も重要な要素のひとつである格差と本心が浮きあがるパートの役です。2人のやり取りは、この作品性のとても本質的な部分と繋がっています。そんな役を、信頼する太賀が演じてくれたのは、とても大きかったと思っています」と語る。関係の深い池松と仲野にしか出せない唯一無二の空気、2人だからこそ作り上げることができたシーンなのだろう。
そして仲野は本作の出演について、「脚本を初めて読んだ時、常に挑戦を続ける石井監督の更なる挑戦に、身震いしました。AIが発達して変わりゆく社会と、変わることのない人間の愛の形を描いた今作が、池松さんをはじめとする素晴らしい俳優の方々によって、どのように映画になっていくのか楽しみでした。僕が演じたイフィーという役は自由度が高く、軽やかでありながら寂しく、とても欲深い人間味をもっています。複雑なキャラクター像を演じるのは、僕自身大きな挑戦になりました。石井監督の演出を信じて導かれるように撮り切れたと思っています」と池松ら共演者への敬意を交えて語った。
『本心』は全国公開中