アメリカのフード・システムに鋭く切り込み、タブーとされていた食品業界の闇を暴いた『フード・インク』(09)の続編となる、映画『フード・インク ポスト・コロナ』が、12月6日(金)より公開される。このたび、本編映像の一部が解禁となった。
アメリカのフード・システムの脆弱性を暴き出す
グローバル・フードの発達の陰にある巨大食品企業や農業問題の闇を暴きながら、オーガニック・フードの本当の価値を訴えたフード・ドキュメンタリー『フード・インク』。2009年にアメリカで公開されると、約10万人を動員/興行収入は約460万ドルを超え、「第82回アカデミー賞」長編ドキュメンタリー賞にノミネートされるなど大ヒットを記録。日本では2011年に公開され、ロングランヒットとなった。
続編となる『フード・インク ポスト・コロナ』は、新型コロナウイルスの世界的流行後に浮き彫りになった、アメリカのフード・システムの脆弱性を暴き出す。パンデミック後、巨大食品企業の市場独占がより一層進み、個人農家の衰退と貧富の格差が大きく広がった実態や、“超加工食品”による健康被害や子どもの糖尿病の増加、さらには巨大企業による奴隷のような移民労働者の搾取など、今話題の米大統領選挙の争点となっている移民問題、社会的格差を「食」の観点から浮き彫りにしていく。一方で、解決策を求め、持続可能な未来を作り出そうと奮闘する農家や活動家、政治家たちの前向きな姿も映し出される。これはアメリカに限った話ではない。日本でも起こっていることである。自分の食が自身を変える。私たちが学ぶべき食の知識や、明日を生きるヒントが満載のフード・ドキュメンタリーが再び誕生した。
本作で明かされる、米大統領選挙 ドナルド・トランプ氏勝利の背景
本編映像では、奴隷のように搾取される移民労働者の悲痛な訴えに続き、2020年4月、全米に感染拡大した新型コロナウイルスの影響で、アイオア州の大手食品企業タイソン・フーズ社の食肉加工工場で起きた衝撃的な事実と、当時、大統領だったドナルド・トランプ氏と巨大食品企業の癒着が明かされる。
パンデミック前の工場内では、マスクの規制もなく、作業員同士で肘を突き合わせながら作業し、持ち場を離れ床に吐いたまま作業に戻っていたという衝撃の事実が判明。工場から感染は拡大し、死者も増えたことで危険を感じた保安官のトンプソン氏は、数日間の工場閉鎖を要請。しかし、タイソン・フーズ社からは「ありえない」と拒否されたと語る。さらに、タイソン・フーズ代表者のジョン・タイソンは、全米の新聞に食糧不足の不安を煽る全面広告を掲載。食肉加工業者らは、当時の大統領であったドナルド・トランプ氏に工場の稼働許可を訴え、国防生産法に基づき大統領令が発令された。映像の最後には、当時のトランプ氏の声明と署名の場面がアーカイブとして映し出され、大企業と癒着があったことが伺える。しかし、そんな過去があったのにも関わらず、アメリカ大統領選挙にて共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利に輝いた。
本作では、各州の農家、労働者、政治家たちのインタビューを交えながらアメリカの食問題に迫る内容となっており、本編で取り上げられた8州のうち6州でトランプ氏の当選が発表された。製作のエリック・シュローサーは語る。「今、米国には人種差別と反移民感情が渦巻いていて、作物の植え付けや食肉の処理、スーパーマーケットやファストフード店の従業員など、食料システムを回している人々をスケープゴートにし、まとめて脅かしている」と。その事実を裏付けるかのように、今回のトランプの勝利には、労働者階級からの圧倒的な支持を得たと言われているが、彼らはなぜトランプ氏を支持していたのか? 本作では、食の観点から、その理由が明かされている。
『フード・インク ポスト・コロナ』は12月6日(金)より新宿シネマカリテほか全国公開