欧米の“妖怪”といえば?
日本の“妖怪”に相当する欧米のカルチャーといえば、ドラキュラや狼男、フランケンシュタインといった古典モンスターになるだろうか。どちらかといえばトロルやゴブリン、レプラコーン、ケット・シー、デュラハンなどゲームの世界でもお馴染みの“妖精”との相似性が高いかもしれない。
日本には水木しげる大先生という神様がいるので、妖怪イコール水木作品という認識が強いだろう。しかも水木サンは様々な国の伝承や土着文化からもインスパイアを受けて(※呼ばれて)おり、あらゆる要素を内包したハイブリッドとも言える。そして、その薫陶を受けた一人が世界屈指のインテリジェンスを持つオタク、ギレルモ・デル・トロ監督だ。
この投稿をInstagramで見る
70年代ホラー『地下室の魔物』の現代版リメイク
現在CS放送中の映画『ダーク・フェアリー』は、デル・トロが製作・脚本を務めたスリラー。欧米に伝わる妖精「トゥースフェアリー」をモチーフにしており、1973年のTV映画『地下室の魔物』のリメイクでもある(原題は共に『Don’t Be Afraid of the Dark』)。オリジナル版はいま観てもゾクゾクする名作で、若かりしデル・トロはたいそう衝撃(&恐怖)を受けたはずだ。
『地下室の魔物』は古い洋館に越してきた若いカップルが主人公で、館に潜む“なにか”の存在に恐怖することになる……というシンプルなお話。50~60年代スリラーのバイブスと、逆に80~90年代の作品に影響を与えたがゆえの既視感も感じられる。こんな映画が深夜にテレビ放送されていたら、それををうっかり子どもが観てしまったら、強烈なトラウマになることは避けられないだろう。
パペット・マスターとジェットジャガーをミックスしたような見た目の小型クリーチャーは、ストップモーションではなく着ぐるみアクターによる特撮で、そのチープさが逆に恐怖を増強。“モンスター”として見ると迫力不足だが、映画の中では絶妙なライティングや奥ゆかしいほどのチラリズム演出によって猛烈に恐ろしく見える。