ローレンス・カスダンの監督デビュー作『白いドレスの女』
よく「才能と人間性は別」などと言われるが、そんな彼が悪女のドツボにはまっていく名演を見せたのが『白いドレスの女』(1982年)。名匠ローレンス・カスダンが『スター・ウォーズ』シリーズや『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』の脚本を経て監督デビューを果たした作品で、ハートは訳アリな女性にのめり込んでいくナンパ野郎のネッドを好演している。
映画冒頭、白ブリーフ一丁で窓辺から遠くの火事を眺めているのは、へっぽこ弁護士のネッド。うしろで身支度をする女性と猛烈にイチャイチャしはじめるが、どうも“ちゃんとした”関係ではなさそうだ。そんなふうに始まる本作は、『ボディ・ヒート』という原題どおり南フロリダの蒸し暑い気候を強調していて、寒い季節に観るとちょっと心地いいい。汗だくのベッドシーンは“情事”という表現がぴったりだ。
家族で観ちゃダメ! なオトナ向けサスペンス
ネッドはオラオラな実業家エドモンドの若き美人妻マティと出会い、ストーカーのような執着の末に不倫関係になる。最初は拒むような素振りを見せていたマティの魅力にアテられ“本気”になってしまったネッドは、「夫と離婚したい」という彼女の願いを叶えるべく、ついにエドモンドの殺害計画を立てる。その後もマティの度重なるムチャな願いに応え、ズブズブと泥沼にハマっていき……。
キャスリーン・ターナー演じるマティは“ザ・ブロンド美女”といった存在感で、仕草の一つ一つが艶めかしく、ネッドがみるみる夢中になっていく様子がよ~く伝わってくる。次第にネッドが哀れに見えてきて辛いが、ハートの演技力のお陰で目が離せない。若かりしミッキー・ロークとの共演シーンはタイプの違うイケメンの色気がムンムンに充満していて眼福だ。
ということで本作はオトナ向けのミステリアスなサスペンス劇なので、家族で観たら気まずくなること間違いなし。80年代のハートの俳優としての勢いが伝わってくる、追悼の意味でも観ておきたい秀作だ。
『白いドレスの女』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年11月放送