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不屈の韓国大統領・金大中
2024年は元韓国大統領、金大中(キム・デジュン)の生誕100周年だという。それを記念して制作された映画『オン・ザ・ロード~不屈の男、金大中~』は彼の生涯と政治家人生を、本人の肉声や関係者のインタビュー、そして本邦初公開の映像を含めた6000時間に及ぶ膨大な映像資料を基に制作された、韓国公開時にも大きな話題を呼んだドキュメンタリーだ。
「選挙で負けまくり」から権力者が最も恐れる男へ
日本の植民地時代に全羅南道に生まれ、若くして海運事業で財を成した金大中。戦乱のさなかにあっても権力者たちは国民の生活、命を省みず、数万もの人々が貧しさや飢えによって亡くなる時代だった。朝鮮戦争を経て祖国の政治を目の当たりにしてきた金大中は事業を畳み、30歳にして国会議員選挙に挑戦。民主主義実現へと動き出す。
しかし、政治は会社経営よりもはるかに難しかった。「落選専門家」と言われるほど選挙では負け続けた彼の、当時の生活の困窮ぶりを証言する家族の映像は切実だ。周囲が苦言を呈するなかで献身的に彼を支え続けた妻も、病に倒れ若くして急死。それでも彼は諦めない。
もともと金大中は喋れる、書ける人物だったようだ。討論の場に出れば無双状態で、政府の広報官になるとめきめき存在感を増していく。そして1961年、38歳で初当選。しかしその翌朝、国軍がクーデターを起こす。首謀したのは後に大統領となる朴正煕(パク・チョンヒ)だった。
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