ハダウェイ監督「永遠に“他人の物語”で働いていくのはどうなのか」
「初めて映画を観て思ったのは、もうすごい! って感じで」などと熱っぽく感想を語ったスナイダーは、「映画がどこから生まれたか、その原点にすごく興味を持ったんだ」と、まずは本作の出発点をハダウェイ監督に問いかける。
15歳の時に観たクエンティン・タランティーノの『キル・ビル』(2003年)に衝撃を受けたというハダウェイ監督は、「2016年に“絶対に監督になる”」という目標を立てたという。その経験を積むために最初はポストプロダクション(※撮影後の映像に関わる様々な技術)に携わるようになったが、次第に「永遠に“他人の物語”で働いていくのはどうなのか、と思い始めた」と明かす。
その理由として「音響は良くも悪くもポスプロでは後まわしだし……」と吐露。「あなた(スナイダー)や他の監督たちを見て、どう俳優たちとやりとりしているか、創造的な視点、問題点など全て見て吸収した。古典的だけど、尊敬する監督たちのデビュー作の規模や予算などを研究した」と振り返り、スタッフとしての経験は“監督になる”という目標に至るまでの貴重な糧となったようだ。
ザック・スナイダー「君の“叫び”は本物だったよ!」
またハダウェイ監督は、自身の大学時代の経験を踏まえて<ローイング>を映画の題材としたことについて、「漕艇の映画がないのは、水上での撮影が大変すぎるから」と明かしつつ、「ボート漕ぎは美しく優雅に見えるけれど、自分が死んでいくような感覚もあり、それを表現したかった」と映画の“はじまり”を語る。
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一方、主演のファーマンは2010年の映画『ソーシャル・ネットワーク』(※ボート大会の描写がある)を観た以外には、ローイングとは一切の接点がなかったという。「まさか自分がやるとは思わなかった。脚本を読んでこのスポーツに魅了された。まるで恋するみたいに」と、この競技との出会いを振り返るファーマン。しかし、撮影前に行ったトレーニングは相当に過酷なものだったようだ。
朝4時半に起きて港まで運転して、3時間漕いでから15分仮眠。15分で食べ物をほおばって、もう3時間漕いだ。毎日6時間、艇の練習。その後、渋滞の中を運転して2回目の朝食を食べ、週に4回1時間のウェイト・リフティング。映画のアレックスと同様、私も変わっていった。
想像を絶するハードな特訓のディテールを語りつつ、ファーマンは思わず苦笑するような表情を浮かべる。さらに、「ローイングに夢中になって、全くの初心者から自分自身が満足できるところまで極めることができるか――映画同様、彼女(アレックス)と同じ道を辿った」と、自分を極限まで追い込んでいく主人公と同じ境地に至ったことを振り返る。
そんなファーマンに対し、「君の叫びは本物だった!」と称えるスナイダー。本作は彼女の名を知らしめた『エスター』以来の主演作となるが、ファーマン自身も「言い表せないほど私の糧になった。こういう役や挑戦を長いあいだ夢見ていたけど、ローレンが私を選んでくれて実現した。この映画を誇りに思ってる。夢じゃないかって自分をつねってるわ」と満足感を滲ませる。
そしてハダウェイ監督も「彼女が役を会得してくれて本当に助かった。彼女の演技が素晴らしくて安心して任せられた」と振り返るが、その一方で“水上シーンでの撮影”は監督以外にローイングを知っているスタッフが誰一人おらず、相当の苦労もあったようだ。
映像ではそのほか、監督が考えていた本作の“真のテーマ”などの裏話がたっぷり語られているので、本作の鑑賞前/後を問わず是非チェックしてほしい。
『ノーヴィス』は2024年11月1日(金)より全国順次公開中