フィリピンにおける『ボルテスV』人気の理由
欧米と同じく東南アジアでも日本アニメの人気は高く、たとえばタイのコンビニやスーパーに行けばアニメのキャラクターとコラボしたインスタント麺のパッケージ等を目にするだろう。同じくフィリピンでも様々な日本アニメが放送れていて、なかでも日本での放送の翌年に上陸し絶大な人気を博したのが、現地の人いわく「テレビをつければ必ずやってた気がする」というほどヘビロテされていた『ボルテスV』というわけだ(※最初の放送は金曜の夕方)。
その人気は、当時の独裁政権が「正義が悪を討つ」という内容を懸念し放送を禁止するほどだったというから、熱狂のほどがうかがえる。のちに民主化を勝ち取ると再び放送が始まり、90年代には幼い頃に観ていた世代が成長したこともあって第二次ブームを迎えることになる。かつて制作陣が作品に込めたメッセージが、海を超えて多くの人に受け入れられたのだ。
そして今回の実写化である。しかも映画1作だけでなくテレビシリーズ全90話も放送という凄まじいボリュームは、もはやSF大河ドラマといっても過言ではない規模感だ。そしてその内容は、まさにファンだからこそ作れる忠実なアニメ実写化そのもの。再現度の高さは鳥肌レベルで、隅々まで愛の深さが感じられる仕上がりに涙があふれてくる。日本公開版はシーンの追加や再編集などを加えた「超電磁編集版」とのことだから、そのリスペクトぶりに感謝するしかない。
愛ゆえの超再現度!キャラ造形やVFXのクオリティの高さに仰天!
ロボットバトルの演出に関しては『パシフィック・リム』(2013年)の影響下にあることは明らかながら、アニメの忠実な実写化という面において本作の志の高さはまさに超電磁レベル。本作の監督マーク・A・レイエス氏が「変えたくなかった」と証言するとおり、制作陣はボルテスVをそのまんま実写化したかったのだから当然のことかもしれない。
それでいて、まんまカニとか蜂とかの“いきもの図鑑”な獣士たちは<敵のロボット>としてのリアリティを重視しリデザインされている点にも注目したい。
また、ひと目見てプリンス・ハイネル(※本作のヴィラン)だと分かる衣装やメーキャップもバッチリ。ハイネルはいま考えると異世界転生モノのようなキャラ設定なので、この実写化をきっかけに人気が再燃する可能性もある(?)。
なお目鼻立ちクッキリ・ハッキリなタイのキャスト陣は総じて、劇画タッチなオリジナル版により近づいたのではと思わせるハマりぶりだ。
『ゴジラ-1.0』(2023年)がアカデミー賞で日本初の視覚効果賞を獲得したことは世界に衝撃を与えたが、東南アジア発の映画作品におけるVFXのクオリティも日々上昇していて、いまやハリウッド顔負けと言っても過言ではない。想像すらできない未来都市をイチから作り出すことができるのだから、もはやアニメ作品の実写化に伴うハードルは(予算の問題は別として)ほとんど取り払われたと考えるべきだろう。
とにもかくにも「ボルテスV」実写化、日本に生まれ暮らす私たちがスルーしては申し訳ないと感じてしまうほどの愛にあふれているので、ぜひ劇場の大スクリーンで超電磁コマ(※重量感の表現が最高)を喰らいにいくつもりで鑑賞に挑もう。
『ボルテスV レガシー』は2024年10月18日(金)より全国公開