女性たちの「ありまま」を映し出したモロー作品
監督デビュー作『リュミエール』は女優4人を主人公に映画業界を内部から描き、モロー自身の半生を彷彿とさせる作品。女優の一人サラ役をモローが演じている。ドイツの名優ブルーノ・ガンツが出演し、タンゴを革新した作曲家アストル・ピアソラが音楽を担当した。
『思春期』は戦争の影が迫る1939年の夏、少女マリーの忘れられない夏休みを丹精込めて紡いだ傑作。伝説的な女優シモーヌ・シニョレが孫を優しく見守る祖母役で出演。日本では1986年に『ジャンヌ・モローの思春期』のタイトルで劇場公開された。
『リリアン・ギッシュの肖像』は「歴史的女優」リリアン・ギッシュに迫るドキュメンタリー。ギッシュとの対話から浮かび上がる映画の歴史と好奇心に満ちた人生に胸が熱くなる。
映画史の影に隠れていたモロー監督作は、女性たちのありままの姿がいきいきと映し出され、今こそ現代的な視点で見返すべき傑作群といえる。
著名人から推薦コメント到着! 劇場パンフも完成
そしてこの度、一足早く映画を鑑賞した著名人から推薦コメントが到着した。
山内マリコ(小説家)は「ジャンヌ・モローが映画を撮った意味、女が女の映画を作ることの重要さ。それを理解するスタート地点にやっとたどり着いた気がする」とコメントし、横浜聡子(映画監督)は「直感と知性に満ちたジャンヌ・モロー監督の映画術に驚き、感服した」と称賛。その他、坂本安美(アンスティチュ・フランセ 映画プログラム主任)、須藤健太郎(映画批評家)、松田洋子(漫画家)、ゆっきゅん(DIVA)からも、特集上映を喜ぶ言葉が届いている。
また、10月11日(金)より、上映館にて劇場用パンフレットが販売されることも決定し、ポップな表紙イメージが公開された。小柳帝による全三作品の解説、秦早穂子、坂本安美、ゆっきゅんによるレビューなどが掲載されている。デザインはwoolenの福岡南央子が担当した。
【コメント一覧】(※五十音順・敬称略)
坂本安美(アンスティチュ・フランセ 映画プログラム主任)
もしこれまでジャンヌ・モローという女優の偉大さがこれらの作品を覆い隠してきたのならば、映画作家ジャンヌ・モローをそこから解き放つのではなく、女優であるとともに映画作家であるひとりのアーティスト、ジャンヌ・モローの存在を確認すべき時が、今ようやく来ているだろう。
*劇場用パンフレットへの寄稿より抜粋
須藤健太郎(映画批評家)
ここにはいくつものペアがある。映画と人生。女と男。子どもと大人。粗野と繊細。田舎と都会。休暇と仕事。電話と手紙。誕生と死。歴史と現在。眼鏡と裸眼。無声と有声。光と影。木靴と自転車。前と後ろ。姉と妹。そして2人の女優兼監督。互いに互いを照らし合うようにして。
松田洋子(漫画家)
憧れの人はたくさんいるが「こんな人になりたい」と思ったのはジャンヌ・モローだけ。女性と女優の達人ジャンヌ・モローが撮って見せてくれる女たちにいつかの自分を見つける。私が煙草をやめたのは、禁煙に成功したのではなく愛煙に挫折したのだと思わせる。
山内マリコ(小説家)
ジャンヌ・モローが映画を撮った意味、女が女の映画を作ることの重要さ。それを理解するスタート地点にやっとたどり着いた気がする。温かなフィルムの中に、女による映画の夢がたしかに刻み込まれていた。
ゆっきゅん(DIVA)
(リリアン・)ギッシュがやってきたことは、ここにいる(ジャンヌ・)モローに大きなものを残してくれているとわかる。大女優シスターフッド、若者はこれを踏まえた上でギッシュとモローの作品を観まくる2024年をやっていこう。これからで、大丈夫です。
※劇場用パンフレットへの寄稿より抜粋
横浜聡子(映画監督)
人間という存在への深い洞察と、あたたかくも冷静な眼差し。
そしてそれらをうつし映画にするという能力。
直感と知性に満ちたジャンヌ・モロー監督の映画術に驚き、感服した。
「映画作家 ジャンヌ・モロー」は2024年10月11日(金)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開