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ハリウッドが描く<義理・人情>
1974年の映画『ザ・ヤクザ』を観る機会は多くないかもしれないが、どストレートなタイトルと高倉健の出演という基本情報はご存知だろう。ニンジャやサムライなど神秘の国<ニッポン>への好奇心がパンパンに詰まったサスペンス劇で、オープニングから現代日本人のほとんどが知らないであろう任侠トリビアを解説してくれる、名匠シドニー・ポラック監督の代表作の一つだ。
本作は、ご存知マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の『タクシードライバー』(1976年)で知られる脚本家ポール・シュレイダーのデビュー作でもある。その後もシュレイダーはブライアン・デ・パルマ監督の『愛のメモリー』やジョン・フリン監督/トミー・リー・ジョーンズ出演『ローリング・サンダー』、そして『レイジング・ブル』などを次々と手掛けた。
日米名優競演! ロバート・ミッチャム×高倉健
「義理・人情」という日本的な観念で結ばれた日米の男が、巨大なヤクザ組織に立ち向かう姿を描いた本作。もちろん最大の見どころは主人公ハリーを演じたロバート・ミッチャムと、彼を助ける元ヤクザの田中健を演じた高倉健、日米を代表する名優の競演だ。そして健の妹であり、ハリーと浅からぬ縁を持つ英子を演じた岸恵子の美しさにも目を奪われる。
当時、健さんはヤクザ役と距離を置くことで俳優として大きく羽ばたこうとしており、ミッチャムもヤンチャなイメージから脱却し落ち着いた演技派路線を歩み始めたタイミングだった。本作においては、10歳以上も若い健さんのほうが異邦人としてのミッチャムを導くような形になっているが、やはり両者が並び立つシーンなどは並の俳優にはないオーラが感じられる。健さんの鍛え上げられた肉体美にもびっくり&うっとり!
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