まったく愛せない、でも他人ごとじゃない!『二つの季節しかない村』
10月11日(金)より全国順次公開(ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督)
▼サメット(デニズ・ジェリオウル)
トルコ・東アナトリアの田舎村の学校で教える美術教師サメット。都会出身で、同僚たちと話すときはそれとなくマウントをとる。「早くイスタンブールに転任したい」が口癖。社会の不正義と戦う英語教師ヌライと論戦を交わす際、「誰かがなんとかしないと」と言われれば、「それは俺の役目か?」と返す皮肉屋。
プライド高く、ひとりよがりで、屁理屈を並べ、すぐにキレて、周囲を見下す、控えめに言っても“まったく愛せない”男。それなのに、なぜか“他人ごと”とは思えない……。周囲と自分を比べ、他者をやりこめようとするサメットのような人は、現代社会のあらゆるところに居るだろう(自戒を込めて)。
天才デザイナーが抱える苦悩と本音とは?『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』
9月20日(金)より公開中(ケヴィン・マクドナルド監督)
▼ジョン・ガリアーノ
ジバンシィ、クリスチャン・ディオールと、世界的ブランドのデザイナーに次々と抜擢された<ファッション界の革命児>ことジョン・ガリアーノ。しかし、酒に酔ってユダヤ系女性に「ヒトラーが好き」「お前も殺されればいいのに」と発言したり、差別的な暴言を吐く動画が拡散され、逮捕、解雇……と、すべてを失った。
本作は、ファッション業界で絶頂を極め、超人的な仕事量をこなしながら、大切な人を失い、アルコール依存症になるなど、誰もが憧れた彼の裏側に迫るドキュメンタリー。他者の心を踏みにじる言葉は許されるものではない。けれども、彼は奇跡的に復活を遂げる。ガリアーノ自身のインタビューと栄光を振り返りながら、その軌跡を追う。
お調子者ビートルジュースの新たな野望!『ビートルジュース ビートルジュース』
9月27日(金)より公開中(ティム・バートン監督)
▼ビートルジュース(マイケル・キートン)
ティム・バートン監督が、自身の出世作となった1988年の映画『ビートルジュース』の35年後を描いたホラーコメディ。ビートルジュース(マイケル・キートン)は、名前を3回呼ぶと死後の世界から現れる、お調子者の【人間怖がらせ屋】。彼は35年前に求婚した人間リディア (ウィノナ・ライダー)と結婚を諦めていなかった。
ある日、リディアの娘アストリッド(ジェナ・オルテガ)が死後の世界にさらわれる。リディアはビートルジュースに「結婚するから娘を助けて」と頼むのだが、稀代のトラブルメーカーであるビートルジュースのせいで、事態はさらに混乱していく……。良く言えば一途、健気ともいえるビートルジュースだが、自分の野望のためには暴走しがち。果たして、ハロウィンの夜に訪れる結末とは――?
無意識に悪意を連鎖させる“転売ヤー”『Cloud クラウド』
9月27日(金)より公開中(黒沢清監督)
▼吉井良介(菅田将暉)
『スパイの妻』で第77回ベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した黒沢清監督が、見えない悪意と隣り合わせの怖さを描くサスペンス・スリラー。世間から忌み嫌われる“転売ヤー”としてコツコツと働く吉井(菅田将暉)。彼が知らぬうちにバラまいた憎悪の粒はネット社会の闇を吸って成長し、“集団狂気”へとエスカレートしてゆく。
誹謗中傷、フェイクニュースなど、“誰もが標的になりうる”見えない悪意と隣り合わせの生活は、現代社会を生きる私たちの身に覚えがあるはず。日々コツコツと働いて収入を得ている人からすると、右から左へモノを転がして小金を稼ぐ転売ヤーは自分本位に見えてしまうのかもしれないが……。
メタルとカンフーに熱狂する冴えない男!『エストニアの聖なるカンフーマスター』
10月4日(金)より公開(ライナル・サルネット監督)
▼ラファエル(ウルセル・ティルク)
ポップカルチャーが禁じられたソ連占領下のエストニア。青年ラファエルは、革ジャンを着てメタルを鳴らしながら宙を舞う3人のカンフーの達人に出会う。それ以来、ブラック・サバスとカンフーに夢中になるが、ひとりよがりの練習ではちっともカンフーは上達しない。ある日、山奥の修道院で見たことのないカンフーを扱う僧侶たちに出会い、弟子入りを志願するが――。
「ブラックメタル・カンフーで強くなりたい!」と我が道を突き進む主人公。その姿に周囲が唖然としても、まったく意に介さず修行に邁進する姿には羨ましさすらおぼえるが、ある意味では究極の自分本位とも言える?
シャマラン最新作は、優しい父親=残虐な殺人鬼!『トラップ』
10月25日(金)より公開(M・ナイト・シャマラン監督)
▼クーパー(ジョシュ・ハートネット)
『シックス・センス』で全世界を震撼させた M・ナイト・シャマラン監督最新作。溺愛する娘ライリー(アリエル・ドノヒュー)のために、彼女が夢中になっている世界的アーティスト、レディ・レイヴン(サレカ・ナイト・シャマラン)のライブのプラチナチケットを手に入れたクーパー。ライリーは最高の席に大感激だ。
しかし観客が熱狂に包まれる中、異常な数の監視カメラ、会場内外に続々と集結する警察に気づいたクーパー。口の軽いスタッフから「連続殺人鬼を捕まえるため、ライブ自体がトラップ」という情報を得るが、その世間を騒がす残虐な殺人鬼とは、優しい父親にしか見えないクーパー自身だった!
娘のための努力は惜しまない一方、心にモンスターを宿す男。もはやジコチューなどというレベルではないが、振れ幅の凄まじさも常人のそれではない。あの可愛らしかったジョシュ・ハートネットが……という感慨だけでなく、シャマラン監督にふたたび驚かされるはず。
『二つの季節しかない村』
美術教師のサメットは、冬が長く雪深いトルコ東部のこの村を忌み嫌っているが、村人たちからは尊敬され、女生徒セヴィムにも慕われている。しかし、ある日、同僚のケナンと共に、セヴィムらに虚偽の“不適切な接触”を告発される。同じころ、美しい義足の英語教師ヌライと知り合い……。
プライド高く、ひとりよがりで、屁理屈を並べ、周囲を見下す、“まったく愛せない”のに“他人事と思えない”主人公サメット。辺境の地でくすぶる男は、雪解けとともに現れた枯れ草に何を見つけ出すのか――。
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本:アキン・アクシュ、エブル・ジェイラン、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
出演:デニズ・ジェリオウル、メルヴェ・ディズダル、ムサブ・エキジ、エジェ・バージ
制作年: | 2023 |
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2024年10月11日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開