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「怪作映画の音楽」手がけた日本の作曲家が映画祭受賞の快挙!『エストニアの聖なるカンフーマスター』日野浩志郎インタビュー

「怪作映画の音楽」手がけた日本の作曲家が映画祭受賞の快挙!『エストニアの聖なるカンフーマスター』日野浩志郎インタビュー
『エストニアの聖なるカンフーマスター』©︎Homeless Bob Production / White Picture / Neda Film / Helsinki Filmi
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「監督から“聖なる物とブラック・メタルが融合したような楽曲を”と言われました」

普段とは異なる映画音楽制作。そんな中でも“こだわり”を込めることはできたのだろうか? 知られざる映画音楽の裏側についても教えてくれた。

こだわったものとは少し違うんですが、ローランドの「TAIKO-1」という楽器を多用したことで、劇中音楽のカラーを作っているのかなと思います。名前の通り太鼓の音源が入った電子パーカッションで、太鼓芸能集団「鼓童」が関わった楽器だったので、音質は信頼できるなと思い。僕も鼓童との繋がりがあるので数台貸してもらい、それを使わせてもらいました。サンプルは主に太鼓ですが、金物などの小物類もあって、それらもけっこう頻繁に使いましたね。

今回、楽曲制作に参加していただいた前田剛史くんは元々鼓童に所属していた素晴らしい演奏家で、スタジオに招いて映像を見ながら演奏をしてもらいました。あと今思い出したんですけど、楽曲制作をするスタート時にサルネット監督から、大きなテーマとして「聖なる物とブラック・メタルが融合したような楽曲」を今回作っていきたいと言われました。正直、このテーマは僕の得意とするものではなかったので困るなとは思いましたが、サルネット監督を紹介してくれたジャクソンが事前に僕のやっているバンド「goat」のYouTubeを見せてくれていて、それを気に入ってオファーしてくれたということもあって、一回チャレンジしてみることにしました。

本編内でのオススメの楽曲について聞くと、国内外の音楽ファンならば反応するであろう大物ミュージシャンの名前が。監督の云う「聖なる物とブラック・メタル」というキーワードが、ここで繋がってくる。

僕が作ってはいないのですが、増子真二さん(DMBQ等で活動)という共同制作者の方が作ったメインテーマ的な楽曲で、映画の予告編でも使われている結構ハードロックな曲ですかね。少しだけディレクションして作ってもらった楽曲なんですけど、監督が最初に言ってきた音楽のイメージに近づいたというか、ブラック・サバスに近いものが作れたので、とても僕も気に入っています。やっぱり自分で作った楽曲だと主観的に聴いてしまうので、誰かにお願いして作ったものの方が楽しく聞けますね。

『エストニアの聖なるカンフーマスター』©︎Homeless Bob Production / White Picture / Neda Film / Helsinki Filmi

「制作スタッフからメールで“受賞おめでとう”みたいな連絡が来て……」

本作はエストニアのアカデミー賞<EFTA>を席巻し、ここで日野は最優秀音楽賞を受賞している。日本の音楽家として相当な快挙となるが、場所を問わずひたむきに音楽活動を続けてきた日野はマイペースぶりを崩さない。

メールで制作スタッフから「受賞おめでとう」みたいな連絡が来て、最初は小規模の映画祭なのかなと思ってインスタを見たら、なんかすごいことになってて、そもそも当初は賞なんて全く想像してなかったので、本当に驚きでした。映画祭のタイミングがちょうどヨーロッパツアー中だったんですけど、制作スタッフには日本にいると思われていたようで、授賞式に来るかは聞かれませんでした。ただ実はスケジュール的には授賞式に参加できそうだったんですけど、かしこまった雰囲気は苦手ですし、特にこちらからは何も言わずに行きませんでした。

『エストニアの聖なるカンフーマスター』©︎Homeless Bob Production / White Picture / Neda Film / Helsinki Filmi

関西をベースに世界中で音楽活動を行い、着実にその名を浸透させてきたgoat。YPYという個人名義での活動も行う日野は今回、映画音楽という新たな領域でも非常に大きな結果を残した。そんな日野に、「今後も映画音楽にチャレンジしたいか?」と聞いてみた。

やってみたいですね。舞台作品だったりなどは基本、全部自分で企画して主導することが多いので、今回のように他の人によるプロジェクトは新鮮です。そのプロジェクトに合わせてリサーチすることで新しくインプットもできるし、自分の持ち味と組み合わせてアウトプットしていくという作業は自分の成長にも繋がるしやりがいもありますね。なので今後も機会があれば、ぜひやっていきたいです。

今後の活躍も楽しみな日野浩志郎、およびgoat。主人公を鼓舞するような魂に響く日野の音楽は、間違いなく本作の大きな魅力の一つである。世界に名を轟かせた日本人ミュージシャンの<音楽>に耳を傾けつつ本作を鑑賞すれば、より深い没入感を味わえるはずだ。

『エストニアの聖なるカンフーマスター』は2024年10月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開

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