日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督(『月』『舟を編む』)の最新作『本心』が、11月8日(金)より公開される。このたび、本作に登場する「リアル・アバター」や「ヴァーチャル・フィギュア(VF)」など、テクノロジーの進化の先で待ち受ける“近い将来”を切り取った場面写真が一挙解禁となった。
既に“現実”となりつつある“少し先の将来”
原作は、映画化も話題となった「ある男」の平野啓一郎による傑作長編小説「本心」。キャストには、近年ますます活動領域を拡張している俳優・池松壮亮を主演に迎え、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子ら日本の映画界を牽引する豪華実力派俳優陣が集結した。
本作は、今からさらにデジタル化が進み、“リアル”と“ヴァーチャル”の境界が曖昧になった少し先の将来が舞台。亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせるという、テクノロジーの未知の領域に足を踏み入れた青年・石川朔也(池松壮亮)と、彼を取り巻く人間の〈心〉と〈本質〉に迫る革新的なヒューマンミステリー。
2019年に新聞連載が開始され、2021年に出版された原作小説「本心」。当時は2040年代を舞台にした“未来の物語”として描かれていた。しかし、現実では想像を超える速度でテクノロジーが発展。映画の舞台設定も合わせて「今から地続きの少し先の将来(始まりは2025年)」へと前倒しされた。現に、“亡くなった人をAIで蘇らせる”サービスはアジア各国で既にビジネス展開されており、多くの論争を生んでいる。また、主人公・朔也の仕事“リアル・アバター”も、日本ではコロナ禍以降に急速に普及した“UberEATS(ウーバーイーツ)”の延長線とも言える。もはや、私たちの生活に定着しつつある“リアルな日常風景”と呼べるかもしれない。
主人公・朔也が、依頼人に身体を貸し出し「リアル・アバター」として働く姿や、VFゴーグルの向こう側に映る「ヴァーチャル・フィギュア」の母親などが写し出されたシーンは、我々がかつて想像していたようなSFの世界ではなく、“日常”に溶け込んだ、今の生活と地続きの設定である事に着目して欲しい。場面写真には、そんな時代に翻弄されていく人間の姿も写し出されている。
田中裕子演じる母親・秋子、綾野剛演じる中尾ら「ヴァーチャル・フィギュア=VF」
最先端のAI(人工知能)、AR(添加現実)の技術を組み合わせながら、仮想空間上に外見だけでなく会話もできるように再現された“人間”とその技術。これまでのライフログ、メールのやり取り、写真、動画、ネットの検索履歴などの情報をAIが集約することで生成され、日々学習を続ける。朔也は“自由死”を望んでいた母の本心を知るため、VF技術を開発した技術者・野崎将人(妻夫木聡)に依頼し、AIで母親を蘇らせる。最初こそ不安を抱いていたものの、まるで本当に生きているかのようなVFの母親、そしてひょんなことから同居することになった生前の母親の親友・三好彩花(三吉彩花)と共に、他愛もない日常を取り戻していく。しかし、VFは徐々に“息子の知らない母親の一面”をさらけ出していくことに…。
池松壮亮演じる朔也、水上恒司演じる岸谷ら「リアル・アバター」
自身のカメラ付きゴーグルと依頼者のヘッドセットを繋ぎ、遠く離れた依頼者の“身体”となって、要望を叶える職業。依頼人はアバターに指示を出すことで、疑似体験が可能となる。ある事故をきっかけに昏睡状態に陥り、目覚めたころには職場がロボット化され、失業に追い込まれた朔也。そんなとき、幼馴染の岸谷(水上恒司)の紹介で、渋々始めたのがリアル・アバターの仕事だった。病室から動けず、最期の時間を思い出の地で過ごしたいと願う若松(田中泯)からの依頼をはじめ、様々な顧客による際限のない要求、時に悪意のある理不尽な命令が、次第に朔也の心を錯乱させる。
「VF」や「リアル・アバター」のほかにも、朔也の母親のように個人が自分の“死”の時期を選ぶことのできる“自由死”という制度が施行されているなど、人間の存在価値が尚一層問われ、個々人の欲望がさらにエスカレートする時代を描く本作。果たしてAI心を再現したとき、人は何を失い、何を見つけるのか。そしてAIは人間の“本心”までを再現できるのか?
『本心』は11月8日(金)より全国ロードショー