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親心がヤバい方向にスパークするサスペンス劇『身代金』
映画『身代金』はそのタイトルどおり、息子を誘拐された成り上がりの大富豪が、なんとか愛する我が子を取り戻そうと奮闘する物語。しかし、犯人とのギリギリの綱引きを繰り広げた結果……といったジャンル映画的な“正攻法”ではなく、要求された200万ドルの身代金を<犯人への懸賞金>にしてしまうという、命がけのギャンブルのような手段が尋常ではないスリルを呼ぶ。
誘拐事件をテーマにする以上、犯人と被害者および家族、それを取り巻く警察などの駆け引きがストーリーのメイン要素となるのが定番。だが本作でメル・ギブソンが演じる主人公トムは、良き父親ではあるが汚いことも多々やってきた男。FBIに丸投げなんてできるわけもなく捜査に首を突っ込みまくるのだが、そこが最大の見所になっている。
脂の乗りまくったメルギブのブチギレ演技に注目
本作では犯人グループの一人を若かりしリーブ・シュレイバーが、最重要キャラであるベテラン刑事をゲイリー・シニーズが演じている。最後までネタバレを引っ張るタイプのストーリーではないが、子を想うあまりトムがブチギレる中盤の展開や、ついに真犯人と退治するクライマックスなど、全編にわたってハラハラさせる演出が見事。
この頃のメルギブはアカデミー賞で作品賞や監督賞ほか5部門を獲得した主演作『ブレイブハート』(1995年)で監督としての才能も認められ、まさに絶頂期を迎えていた。その翌年に公開された本作は名作古典映画のリメイクであり、名匠ロン・ハワード監督の手堅さや実力派キャストの名演など、スリリングながら安心して観ていられる名作サスペンス劇である。
『身代金』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年9月放送
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