異性愛を常識とする当時の概念や、それを支えてきた映画のあり方に対抗した90年代の<ニュー・クィア・シネマ>というムーブメントを牽引し、インディカルチャーの旗手として知られるグレッグ・アラキ監督作『ドゥーム・ジェネレーション』(劇場公開:1996年7月6日)と、『ノーウェア』(劇場公開:1998年8月3日)が、約30年の時を経て待望のデジタルリマスター版でリバイバル公開が決定した。
11月8日(金)より『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』、11月15日(金)より『ノーウェア デジタルリマスター版』が、渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国順次公開される。
グレッグ・アラキによる〈若者の終末〉を描いた衝撃の2作品
一貫してティーンエイジャーを主人公に同性愛者のリアルライフを描いてきた彼が、プロデューサーからの「異性愛映画を撮ったら制作予算をあげよう」という提案に対し、彼なりの反骨精神あふれるパンクなやり方で、「表向きは“異性愛映画”としつつも、“史上最もクィアな異性愛映画”を作りたかった」と語る『ドゥーム・ジェネレーション』。そして、監督自身も「3部作の中で間違いなく最も野心的な作品」と評し、まるでジェットコースターのようなスピード感で若者たちの〈終末の日〉の一夜を描いた『ノーウェア』。この2作品に『トータリー・ファックト・アップ』(1994)を加えた3作は、<ティーン・アポカリプス・トリロジー>と称され、いずれの作品もティーンエイジャーの若者たちを描いている。
その理由についてグレッグ・アラキは、「ティーンエイジャーの映画を作るのが好きなんだ。彼らの“ホルモンが狂った生活”には、忘れられない高揚感がある。彼らは1日に10回生きては死ぬような興味深い題材であり、私がこの世界について感じていることを体現している」と語っている。また同時に、自身の映画を「アウトサイダー、パンクス、クィア、社会やコミュニティに馴染めない人たちのためのもの」と位置付け、<ニュー・クィア・シネマ>というムーブメントを牽引した。
サンダンス映画祭が今、再評価する才能
2023年のサンダンス映画祭にて、このリマスター版が上映されると「今回の映画祭で見た中で最も大胆で素晴らしい映画は28年前に作られたグレッグ・アラキの『ドゥーム・ジェネレーション』だった。この作品はX世代の不安や焦燥感を描いた暴力的でエロティックな衝撃作だ」(Indiewire誌)と絶賛された。
『ドゥーム・ジェネレーション』は、1995年にサンダンス映画祭にてプレミア上映され、当時の常識を超えた性表現に、観客にも衝撃をもたらした。そこから約30年の時を経て2023年にサンダンス映画祭を主催するサンダンス協会が選出するフィルムアーカイブコレクションに『ドゥーム・ジェネレーション』『ノーウェア』が選出され、協会の支援も受けデジタルリマスターされた。このコレクションには、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)、『リアリティ・バイツ』(1994)、『セックスと嘘とビデオテープ』(1989)など、これまでサンダンスが生んできた名作が並ぶ。
30年近く経った今もなお人々の記憶に残り続けている幻の衝撃作が、公開当時にはそのストレートな性表現から映画公開のレーティング評価ができないという事情でやむなくカットされたシーンも含めた貴重なディレクターズカットとして、色鮮やかに、そして刺激的に今蘇る。
『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』は11月8日(金)より、『ノーウェア デジタルリマスター版』は11月15日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国順次公開