ガチ恋〈冷凍睡眠〉物語『フォーエヴァー・ヤング 時を超えた告白』
本作のストーリーをざっくり説明すると、“昏睡状態に陥った恋人の回復を待つために人工冬眠の実験台になった男の時を超えた愛”といったところだろうか。舞台設定は1939年のアメリカ。当時すでにSFの概念自体はあったはずだが、本作のコールドスリープ技術などに関する設定もフィクション全開だ。
メルギブ演じる主人公ダニエルは米軍のパイロットで、恋人のヘレンに「結婚しよう」の一言が言えないシャイな青年。いま観ると「そんなメルギブがいるか」と思ってしまうが、そこは名優、しっかり誠実な男になりきっている。
ある日、ヘレンが交通事故に遭い昏睡状態に陥ってしまう。それから半年が経ってもまったく回復の兆しが見えないことに絶望したダニエルは科学者で友人のハリーに嘆願し、彼が極秘に研究していた人間冷凍装置の実験台に志願するのだった。
それから長い月日が立ち、そのへんの納屋で完全に忘れ去られていたダニエルは奇跡的に冷凍保存状態のまま発見され、しかも無事に生還。だが彼が目覚めたのは恋人の事故から53年後、1992年の世界だった……。
悪い人は出てこない、心に優しいヒューマンドラマ
まさにコールドスリープもののお手本のようなストーリーではあるものの、とにかく描きたいのはラブストーリーなので細かいツッコミどころも少なくない。とくにダニエルが目覚めてからの展開は昨今の異世界転生ものかと思うほどのスピード順応ぶりだが、半世紀の刻を超える愛の前では細かいことはどうでもよくなる、と考えれば何の問題もない(?)。
そんな本作を観ていてハッと気づくのが、主人公の恋路を邪魔するライバルとか、手柄を横取りしようとする悪の科学者とか、冷凍睡眠技術を悪用せんとする政府関係者とか、いわゆる“悪人”がほとんど出てこないこと。そしてそれが、ご都合主義へのツッコミ欲求を上回る<心地よさ>で、それを感じると同時に自身の心労にも気付かされるという、まるでストレスのリトマス試験紙のような作品でもあるのだった。
ちなみに監督は『13日の金曜日』シリーズや『ガバリン』などのスラッシャー/ホラー映画を手掛けてきたスティーヴ・マイナーで、子役時代のイライジャ・ウッドも出演(超絶かわいい)。ほかにも意外な見どころが盛り沢山なので、ぜひご自宅でまったり鑑賞して観てはいかがだろう。
『フォーエヴァー・ヤング 時を超えた告白』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年9月放送