テロ事件の被害者遺族が激怒した「“命の値段”を査定する仕事」とは?〈9.11テロ〉から23年目に改めて観たい実話ベースの衝撃作

「遺族補償」は“修羅の道”か?『ワース 命の値段』
2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生。未曾有の大惨事の余波が広がる同月22日、政府は、被害者と遺族を救済するための補償基金プログラムを立ち上げる。プログラムを束ねる特別管理人の重職に就いたのは、ワシントンD.C.の弁護士ケン・ファインバーグだ。

『ワース 命の値段』© 2020 WILW Holdings LLC. All Rights Reserved.
調停のプロを自認するファインバーグは、独自の計算式に則って補償金額を算出する方針を打ち出すが、彼が率いるチームはさまざまな事情を抱える被害者遺族の喪失感や悲しみに接するうちに、いくつもの矛盾にぶち当たる。遺族の対象者のうち80%の賛同を得ることを目標とするチームの作業は停滞する一方、プログラム反対派の活動は勢いづいていく。
プログラム申請の最終期限、2003年12月22日が刻一刻と迫るなか、苦境に立たされたファインバーグが下した大きな決断とは……。

『ワース 命の値段』© 2020 WILW Holdings LLC. All Rights Reserved.
現代社会における“命の不平等”を突きつける
本作は<補償基金>を成立させる段階から描いていて、その裏には遺族による集団提訴などを避けたい狙いもあった。しかし“全員一律”での支払いの難しさ、被害者や遺族の“立場の違い”による様々なハードルに直面することで、弁護士ファインバーグの意識も徐々に変わってくる。同性カップルが抱える“(本人たちにはいっさい非がない)問題”もしっかり描いていて、しかしそのエピソードをなにか美化しようとするのではなく、様々な被害者や遺族と同列で描く。

『ワース 命の値段』© 2020 WILW Holdings LLC. All Rights Reserved.
今のところテロ事件とは縁遠いかもしれない(?)が、世界屈指の災害国である日本が同じ状況に遭ったとき、どんな声があがり、どんな対応がなされるだろうかと考えると、やはり暗澹とした気分にはなる。主演は、実話ドラマ『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』(2021年)でも追い詰められる人物を好演しているマイケル・キートン。事件直後は“システム”に準じようとしていた彼の<変化>を、事件から23年目のいま改めて見つめたい。

『ワース 命の値段』©2020 WILW Holdings LLC. All Rights Reserved.
『ワース 命の値段』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年9月放送
マイケル・キートン主演『ビートルジュース』(1988年)
CS映画専門チャンネル ムービープラス「『ビートルジュース ビートルジュース』公開記念!ティム・バートン監督特集」で2024年9月放送