オカルトブームを巻き起こした『エクソシスト』
ホラー映画の金字塔にしてオカルトブームの火付け役となった『エクソシスト』(1973年)は、ホラーが苦手でも映画ファンならばご存知だろう。今でこそ怪談の定番となった“悪霊憑き”をテーマに、恐ろしく変貌していく少女と取り憑いた悪魔と神父との戦いを描き、アカデミー賞脚色賞&音響賞を受賞した傑作だ。
そんな『エクソシスト』だが、実際の悪魔憑き事件をベースにしていることはご存じだろうか? ウィリアム・フリードキン監督は“低予算で撮れるイロモノ”な側面が大きかったホラー映画を、世界的ヒットが狙える最強ジャンルに押し上げた功績でも語られるが、その成功には実話をベースにした異様なリアルさが貢献していたことは間違いないだろう。
悪魔に憑依された少年ローランド・ドー
映画『エクソシスト』の原作は、1940年代に起こった「ローランド・ドーの憑依事件」に基づいて書かれた1970年代の同名小説(著:ウィリアム・ピーター・ブラッティ)。出版のわずか2年後に映画化され、主人公のローランド少年は少女リーガンに変更されたが、その“悪魔への変貌ぶり”が世界中に衝撃を与えた。
米メリーランド州に暮らしていた当時14歳のローランド少年(仮名)。彼が自宅で体験したという不可解な現象の数々は、ほぼ映画でリーガンが体験する通りのものだ。そして全身に現れた引っかき傷や、病院での検査なども実際に行われたという。つまり実際にも「打つ手なし」と判断された結果、最後の手段として悪魔祓いが行われたのだ。
ちなみにローランド少年も悪魔祓いを行ったボウダーン神父も、フィクションとは異なりしっかり生き延びている。とくにローランド少年はのちにNASAに就職し、アポロ計画にも従事したというから驚きだ。
#OTD in 1949 (reportedly), #Jesuit Fr. William Bowdern, pastor of College Church, ended the exorcism of a young man who was thought to be possessed. This incident later inspired William Peter Blatty’s classic novel & movie, The Exorcist. #SLU200 For more: https://t.co/QnXDs04hOQ pic.twitter.com/XTTSqeGWIJ
— SLU Archives (@SLUArchives) April 18, 2018
ブラッティは実際の事件の関係者にしっかり取材できなかったそうだが、彼の小説では「これは悪魔憑きなのか?」という空気感が全編に漂っている。映画化によって「悪魔vs神父」の構図が明確化され恐怖演出もド派手なっており、盛大な誇張は批判の対象にもなったが、それが世界的ヒットの理由であることには疑いがない。