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なぜ国連は眼前で起こった大量虐殺を止められなかったのか?今こそ観るべき実話ベースの紛争ドラマ『アイダよ、何処へ?』

なぜ国連は眼前で起こった大量虐殺を止められなかったのか?今こそ観るべき実話ベースの紛争ドラマ『アイダよ、何処へ?』
『アイダよ、何処へ?』©2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte
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「スレブレニツァの虐殺」はなぜ止められなかったのか

スレブレニツァの虐殺は「なぜ国連は動かなかったのか」という大きな<?>とセットで語られる。ユーゴスラビア連邦の崩壊に伴うボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が発端ではあるが、本作の鑑賞中は極限状態のカオスに放り込まれたような感覚に陥るので、そういった背景をイメージする余裕はないかもしれない。

『アイダよ、何処へ?』©2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

ボシュニャク人、セルビア人、クロアチア人の対立(いずれにも多大な被害者がいる)は最低限認識しておくとして、「早い段階で国連保護軍が派遣されていながらボシュニャク人に対する処刑行為が横行していた」という事実に対する疑問はどうか。本作は全てが史実通りではないにしろ、生存者であるボシュニャク人エキストラの証言も取り入れるなど、現地で起こった“顛末”が分かりやすく示唆されている。

『アイダよ、何処へ?』©2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

“傍観者”になってしまう混沌と恐怖

アイダ(ボシュニャク人)は物語の主人公だが、当然ながら虐殺を止められる立場にはない。ただひたすら家族を守ろうとする一人の母親でしかないのだ。国連保護軍の苛立ちや良心の呵責も描かれはするものの、事態が事態だけに無力さばかりが印象に残る。没入感が凄まじいため、中盤以降の混沌状態には観客も“流れ”に逆らえず、すっかり“傍観者”になってしまう。

『アイダよ、何処へ?』©2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

銃口を突きつける包囲、選別・隔離、生活物資の不足、餓死・病死……。“安全地帯”への攻撃は、今まさに私たちのスマホにリアルタイムで流れてくる惨状そのものだ。しかし、虐殺の様子が個人レベルで生中継される時代になってなお、それを許す世界の無関心や暴力に与する巨大利権を前にして、私たちは無力感に苛まれている。

『アイダよ、何処へ?』©2020 Deblokada / coop99 filmproduktion / Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte

それでも搾取の構造を知り、様々な形で被迫害者に寄り添い、世界の歪みを意識しながら生きることに意味がないわけではない。8月15日は「終戦の日」。『アイダよ、何処へ?』は夏が来るたび、凄惨なニュースを見るたびに思い出す、そして今こそ改めて観るべき映画だ。

『アイダよ、何処へ?』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年8月放送

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