『アシスタント』の監督キティ・グリーンと、主演ジュリア・ガーナーが再タッグを組んだフェミニスト・スリラー『ロイヤルホテル』が、7月26日(金)より全国公開中だ。このたび、キティ・グリーン監督が明かす制作秘話が解禁となった。
女性にとっての恐怖を描く、新感覚フェミニスト・スリラー
ハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)の親友2人。旅行で訪れたオーストラリアでお金に困り、荒れ果てた田舎にある古いパブ「ロイヤルホテル」に滞在し、バーテンダーとしてワーキング・ホリデーをすることに。単なる接客バイトかと思いきや、彼女たちを待ち受けていたのは、飲んだくれの店長(ヒューゴ・ウィーヴィング)や荒々しい客たちが起こすパワハラやセクハラ、女性差別の連続だった。楽観的なリブは次第に店に溶け込んでいくが、真面目なハンナは孤立し精神的に追い込まれ、2人の友情は徐々に崩壊していく……。
本作は、オーストラリアの荒野にたたずむ「ロイヤルホテル」という名のさびれたパブを舞台に、ワーキング・ホリデーに来た女性2人に襲い掛かる身の毛もよだつ悪夢を描いた新感覚のフェミニスト・スリラー。2016年に『Hotel Coolgardie(原題)』としてドキュメンタリー映画化された、オーストラリアに実在するパブがモデルとなっている。このドキュメンタリーは、ノルウェーの女性バックパッカー2人が住み込みで働く中でハラスメントを受ける様子を詳細に記録。本作を手掛けた監督のキティ・グリーンは審査員を務めたある映画祭でこのドキュメンタリー映画を目にし、そこからインスピレーションを受け『アシスタント』(19)の主演ジュリア・ガーナーやスタッフを再集結して作り上げた。2023年9月に「第50回テルライド映画祭」、続く「第48回トロント国際映画祭」でも上映され好評を博し、『燃ゆる女の肖像』『パラサイト 半地下の家族』などのヒットが続く新進気鋭の映画スタジオ「NEON」配給により2023年10月に全米公開。限定公開ながらもクリーンヒットとなり、ラストシーンを巡っては物議を醸した話題作だ。
キティ・グリーン監督は、本作の舞台にもなったオーストラリア・メルボルン出身で、『Ukraine Is Not a Ukraine Is Not a Brothel』(13)でドキュメンタリー監督としてデビュー。Netflixオリジナル『ジョンベネ殺害事件の謎』(17)を手掛け、2017年に巻き起こった「#Me Too運動」に自身初の劇映画の題材を見出し、職場におけるハラスメント問題を題材にした『アシスタント』(19)で初の劇映画作品を作り上げた。同作は、日本でも2023年に公開されヒットを記録。今回も再び、職場でのパワハラ、性的虐待を題材にした作品を作り上げた。
キャスティングは5分で決まった!?監督が明かす制作秘話
<映画制作のきっかけ>
キティ・グリーン監督は、2017年にオーストラリアで開催されたある映画祭で審査員を務め、そこでドキュメンタリー映画『Hotel Coolgardie(原題)』に出会ったことで、本作の構想を得たという。そのドキュメンタリーは、フィンランド人の女性2人が住込みで働き、そのパブで客から受けるハラスメントの様子を映している。それ以前にも、オーストラリアの田舎のパブを舞台にした作品を観たことはあったが、女性の視点から描かれた作品は初めてだった。グリーン監督は、このドキュメンタリーに釘付けになり、『アシスタント』を完成させたばかりだったが、より広がりのある内容に思えたため、すぐに『ロイヤルホテル』の構成に取り掛かったという。グリーン監督は、「異なる文化の衝突は、飲酒文化やジェンダー・ダイナミクスという広範囲な議論を交わすのに効果的な方法だと感じました。脚本の出発点として豊かで流動的です」と語っている。
<キャスティングについて>
キャスティングについては、ドキュメンタリーと同じく女性2人を主演に迎えようと考えていた。ハンナ役には、グリーン監督の長編劇映画デビュー作の『アシスタント』(19)でタッグを組み、マーベル作品『The Fantastic Four(原題)』(2025年米公開)に出演予定の新鋭俳優ジュリア・ガーナーを以前から考えていた。そして、ガーナーを念頭にハンナを書き下ろした。
今回、再タッグを組んだことについて「ジュリアとはとても息が合います。話さなくてもお互いの考えていることがわかるような関係です。ジュリアと出会えたこと、そしてジュリアが私を信頼し、再び映画作りに関わってくれたことを幸運に思っています。ジュリアと私の信頼関係が、プロジェクト全体を形作ると言っても過言ではありません。ジュリアがハンナを体現し、私が彼女の視点を捉えたのです」と、ガーナーと再び組めたことへの喜びを明かした。
リブ役には、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)、『マトリックス レザレクションズ』(21)、TVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』など数々の大作に出演しているイギリス人俳優ジェシカ・ヘンウィックを起用した。ヘンウィックについて、グリーン監督はこう述べる。「リブ役には、ジュリアとうまくコンビを組むことができ、ジュリアとは異なるエネルギーを持つ俳優を見つけることが課題でした。ジェシカは元々候補ではありましたが、彼女のエージェントから会うことを勧められました。スカイプで話し始めて5分もしないうちに、ジェシカがリブ役にぴったりだとわかりました。ジェシカはリブの性格をよく理解していて、とても自然でした。撮影現場でもジュリア意気投合し、本当に素晴らしいコンビになりました」
しかし、男性陣のキャスティングには悩んだという。グリーン監督は、「それぞれに個性を出したかったですし、同じタイプにはしたくありませんでした。大半は嫌な奴の役ですから、演じたがらない俳優も多く、誰にオファーするか迷いました。実生活でも役柄どおりのタイプは起用したくないですし、嫌な奴を演じられる善人を選びたかった」と述べた。
オーストラリア人俳優のヒューゴ・ウィーヴィングは、『プリシラ』(94)のミッチ役や、『マトリックス』シリーズのエージェント・スミス役、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、『ホビット』シリーズのエルロンド役、『V フォー・ヴェンデッタ』(05)のV役など多くの人たちに親しまれる象徴的な役を演じており、本作ではパブであるオーナーのビリー役に起用した。グリーン監督は、ウィーウィングについて「彼のように、多くの人が信頼し尊敬する俳優に作品の船長になってもらいたかったのです。ヒューゴは完璧な人選でした。キャストやクルー全員をよく見て支えてくれました」と彼の素晴らしい人柄について語った。
『ロイヤルホテル』は7月26日(金)より絶賛公開中