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実際の凶悪殺人事件を映画化する気鋭監督の長編デビュー作『スノータウン』はトラウマ級の激悪後味な傑作【鑑賞ガチ注意】

実際の凶悪殺人事件を映画化する気鋭監督の長編デビュー作『スノータウン』はトラウマ級の激悪後味な傑作【鑑賞ガチ注意】
『スノータウン』©2010 Screen Australia, Warp Films Australia Pty Ltd, Film Victoria, South Australian Film Corporation, Adelaide Film Festival and omnilab Media Pty Ltd
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オーストラリアで実際に起こった猟奇殺人事件を映画化

なにやら不穏な独白ナレーションから始まる本作だが、導入は平和な田舎町の長閑な日常を映し出している(ように見える)。しかし、そのすぐ裏側では未成年に対する性的虐待が日常的に横行していて、主人公ジェイミーを含む兄弟たちは常に危険にさらされていた。

そこに現れた母親の新彼氏ジョンの存在は、ジェイミーに希望の光を与えたことだろう。つねに明るく振る舞い、親身に話を聞いてくれるジョンは父親のようであり、歳の離れた兄弟のようでもある。次第に信頼関係を築いていく2人だったが、それは家族としての絆というよりもカルトの狂信、いや洗脳に近かった。

『スノータウン』©2010 Screen Australia, Warp Films Australia Pty Ltd, Film Victoria, South Australian Film Corporation, Adelaide Film Festival and omnilab Media Pty Ltd

町の性癖異常者らを根絶しようと次々と殺人を繰り返していくジョン。これは90年代にオーストラリアで実際に起こった猟奇殺人事件がベースになっていて、4~5人の実行犯と協力者によって計12人が殺害された。加害者側は小児性愛者などを理由に殺したとしているが、実際にはこじつけのようなものがほとんどだったという。

『スノータウン』©2010 Screen Australia, Warp Films Australia Pty Ltd, Film Victoria, South Australian Film Corporation, Adelaide Film Festival and omnilab Media Pty Ltd

カーゼル監督は事件の過程をスリリングに見せつけると同時に、近しい関係にある人々がいかに洗脳され凶行に及んでいくのかを静かに、じっくりと描いていく。そこには有害な男性性と歪んだ人間関係も深く関わっていて、過去に日本を含む世界中で起こった凶悪な集団犯罪の構造と共通する。

『スノータウン』©2010 Screen Australia, Warp Films Australia Pty Ltd, Film Victoria, South Australian Film Corporation, Adelaide Film Festival and omnilab Media Pty Ltd

物語中盤以降は、純粋だったジェイミーが徐々に混濁していく様子が観ていてつらく、どうしようもない閉塞感に文字どおり息が詰まりそうになる。絶対に観て! とはお勧めしにくいが、しかし間違いなく観たほうがいいという、ジレンマ込みでの傑作サスペンス~スリラーだ。

『スノータウン』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年7月放送

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