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“極寒の雪山を越えて亡命”の理由とは?衝撃スリラー『越境者たち』の新鋭監督インタビュー「難民と一緒に短編映画を作っていた」

“極寒の雪山を越えて亡命”の理由とは?衝撃スリラー『越境者たち』の新鋭監督インタビュー「難民と一緒に短編映画を作っていた」
『越境者たち』© LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022
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フランス発の極寒スリラー『越境者たち』

雪に覆われた極寒のイタリアン・アルプスを舞台に、亡命者の女性と出遭った傷心の男性の逃走と交流を描く極限のサバイバル・スリラー『越境者たち』が、7月19日(金)より全国公開となる。

妻を事故で亡くし、失意の淵にあったフランス人サミュエルは、娘を友人に預けてイタリアの国境を越えたアルプスにある別荘の山小屋で週末を静かに過ごそうと考えていた。しかし、その山小屋には亡命のためフランス側にある難民施設へ向かうアフガニスタン人女性チェレーが避難していた。翌朝、山を越えてフランスへ向かうというチェレーを放っておけずに道案内を引き受けたサミュエルだったが、彼らを襲うのは雪山の脅威だけではなかった……。

『越境者たち』© LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022

フランスを目指す女性チェレーを演じるのは、自身もイランからフランスに亡命した過去を持ち、『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2022年)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミール・エブラヒミ。そしてチェレーに手を貸す男性サミュエルを演じるのは、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(2019年)や『悪なき殺人』(2019年)、『ボーはおそれている』(2023年)など出演作が日本でも続々公開されているフランスの名優、ドゥニ・メノーシェだ。

『越境者たち』© LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022

フランスの新鋭ギョーム・レヌソン 公式インタビュー到着

米軍の撤退に伴うタリバンの復権により、アフガニスタンから多くの人が日本を含め世界中に逃れてきている。ここ数年、とくにフランスではアフガン難民からの申請がもっとも多いというが、その大多数が正規の方法での出国が難しいことは、たとえばアカデミー賞ノミネートのドキュメンタリー『FLEE フリー』(2021年)などを観ればよくわかる。

『越境者たち』の監督・脚本を手掛けるギョーム・レヌソンは、本作で長編デビューを果たした。日本人よりもはるかに難民と接する機会が多いであろう若きフランス人監督は、この映画にどんな想いを込め、何を訴えるのか? 非常に興味深い撮影エピソードも飛び出したオフィシャルインタビューをお届けする。

「難民と一緒に短編映画を作る団体に所属していました」

―『越境者たち』は初めての長編作品になりますが、その前にまずは監督の出身地と映画に興味を持ったきっかけを教えてください。

私はフランスのサルト県出身です。子どもの頃は、街のCGR(フランスの大手シネマコンプレックス)によく足を運びました。そこでは、大手映画会社の大作から話題作まで放映されており、そこで映画の素晴らしさや可能性というものを見せつけられながら大人になりました。私は映画館に育てられたといっても良いくらい、映画館が心の拠りどころでした。照明の灯が落ちると、めまいがするほどうっとりして、さらにエンドロールを見ることも大好きでした。さまざまな人々の名前が流れてくると、私は幼心にも「大勢の大人たちがこの1本を制作するために関わっていたのだな」と実感し、「このクレジットの裏側にはさまざまなドラマがあったに違いない」と、ひとり空想にふけりました。

―そんな監督のキャリアはいつから始まったのでしょうか?

映画を職業にするためには相当な時間がかかりました。父は保険業で母は銀行員、息子の私は大学で文学と政治学を学び、2013年に映像文学で博士号を取るためにパリに出ます。そして、2014年に初めてのショートフィルムを制作し、幸運なことに<モバイル・フィルム・フェスティバル(Mobile Film Festival)>で入賞。1万5000ユーロ(約260万円)を得ることができました。翌年には別の作品を制作し、数々の映画祭を巡って、たくさんの人たちに会う機会を得ました。様々なご縁から今のキャリアがあります。

―本作のアイデアはどこから生まれたのでしょうか? 純粋なイマジネーションなのか、それとも報道、あるいは監督自身が実際に体験したものだったのでしょうか?

学生時代、アンゴラから来た女性とその子ども2人と一緒に過ごしたことがあります。父親はすでに亡くなっていたため、私は彼らの事務手続きを担当し、子どもたちの家庭教師も務めました。そして当時、パリでは、難民と一緒に短編映画を作る団体に所属していました。そこで、私はフランス人の悲しみの受け止め方と、彼らの国のそれが類似していることに衝撃を受けました。そしてある日、共同脚本家のクレマン・ペニーと「孤独な男性が、とあることから難民の女性の越境を助ける」というシーンを思いつきました。これには社会的、政治的、私的なもの……多くの問題がギュッと詰まっています。もしかしたら、私はこのシーンのために本作を撮ったのでしょう。

『越境者たち』© LES FILMS VELVET – BAXTER FILMS – BNP PARIBAS PICTURES – 2022

次ページ:本作に影響を与えた黒澤明監督の「2人組」映画とは?
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