「丸神頼之(謎に包まれた男)」への強い思いれと圧倒的こだわり
瀧監督はキャスティングの段階では、山田がこの役を受けてくれるのか正直なところ不安だったと明かす。
なにしろ顔がまったく映らない役ですから、“俳優業的にそれでもやってくれるだろうか?”と。それに顔が見えないのだから、演じる役者さんは“表情”の演技を捨てないといけない。
演じる役者に求めるものが必然的に大きくなるキャラクターだけに、特殊メイクとCG技術を駆使して印象的な見た目を作り上げることに。夏の暑さや呼吸のしづらさ、食事の不便さ……。それらを考慮して、当初は“半分は頼之で半分は山田孝之”というビジュアルも考えたというが、一方で、原作に対して中途半端なことはできない、頼之のビジュアルだからこそ生まれる説得力があると、悩みの上に熟考を重ねたという。
しかし、苦慮のまま迎えた初顔合わせでの、「劇中で自分の顔が見えないことは、まったく問題ではない」という山田の言葉に、瀧監督は思わず机の下で小さくガッツポーズを握ったと明かす。キャラクターにかける強い思いを感じたという山田の言葉を振り返るプロデューサーの山本晃久も、「“余計なものは増やさない方がいい。この役に自分の顔はいっさい必要ないと思います”と言ってくださって、本当にありがたかった」と語っており、共に岩明均の原作へ強い思い入れを持つ監督、プロデューサー両名にとっても、“丸神頼之”という本作の大きな指針のひとつが確かに立ち上がった瞬間だったに違いない。
「もっと山田孝之ということが分からないくらい」日本屈指の実力派が見せた役者魂
そうして迎えた撮影現場で山田は、瀧監督や制作陣が提案した特殊メイク案に対して「もっと山田孝之ということが分からないくらい、やれるところまでやった方が良いのでは?」と提案を投げかけたという。それにより、とことんこだわって作られた頼之のビジュアルをまとうこととなるのだが、自身の顔がまったく映し出されることなく、その佇まいと声の演技だけで存在感を放つ山田に対し、「声だけで頼之というキャラクターが出る。あれには現場に居合わせた全ての人が驚いていました。ちゃんと感情が伝わってくる。役者魂を持った、稀有な俳優さんです」と山本。その場の誰もが唸る演技の妙に、絶賛の言葉を送る。
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山田演じる頼之の“すごみ”を現場で感じたのは、主人公ナン丸役の細田も同じだ。第3話で巨大な球体を繰って人をエグり殺害する残忍な一面が描かれた一方、第4話では、ナン丸も心を開く東丸幸子と穏やかに会話を交わす一幕も描かれた頼之。物語においてナン丸が対峙していく大きな存在であり、いわば対局のキャラクターとして描かれるが、そんな頼之という人物を形作っていく場面を間近で目にした細田は、「すごく不気味な存在なのに、キャラクターの優しさを感じさせるところが凄いと思いました。特殊メイクで表情が全くわからないのに、僕だけではなく、周りにいたすべての人がそれを感じていたんです。それは強烈に印象に残っています」と、人をも殺める残忍な一面の裏側に秘めた頼之のキャラクター性を見事に滲ませる、そんな山田の表現力に度肝を抜かれたことを明かした。
連載時より、約四半世紀の時を経て実写映像化された『七夕の国』。その独創的な世界観から映像化困難とも言われた原作は、確かな映像技術と、それを可能にした制作陣の情熱、各キャラクターを立体的にするキャスト陣の愛情によって、この夏、大きな注目を集めるドラマシリーズとして遂に映像化に成功した。
瀧監督が「誰よりも心理を語っている」と評する丸神頼之というキャラクターは、山田孝之という一人の“稀有な俳優”の肉体とその説得力を借りて、謎が深まるこの先の物語でどんな魅力を見せてくれるのか――? クランクアップの際、プロデューサーの山本へ「頼之を演じられて本当によかった」と伝えたという山田。名優渾身の丸神頼之が、観る者の心を深くエグる。
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©2024 岩明均/小学館/東映
岩明均「七夕の国」(小学館刊)