話題作の裏に撮影監督メッサーシュミットの貢献あり!
エリック・メッサーシュミットは、デビッド・フィンチャー監督に見出された新進気鋭の撮影監督。フィンチャー監督作『ゴーン・ガール』(2014年)で初めて照明監督として映画に携わり、そのわずか2年後には同監督のNetflixオリジナルシリーズ『マインドハンター』(2017年~)の撮影監督に抜擢され、これが撮影監督としてのデビュー作となった。
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— Netflix (@netflix) August 5, 2019
『Mank/マンク』では、古典的なハリウッド映画のスタイルを踏襲したノスタルジックなモノクロ撮影が高く評価され、その年のアカデミー賞を受賞するなど、若手撮影監督としてその存在感を遺憾なく発揮している。
巨匠マイケル・マン監督とは本作で初のタッグとなるメッサーシュミットだが、マン監督の作品に不可欠な「雰囲気とストーリーの視覚的な融合」をしっかりと理解し、劇中に横たわる2つのパートをそれぞれ異なる手法で撮影した。
「メッサーシュミットの独特な感性は、私のニーズに対し完璧なものだった」
ひとつ目のパートは、疾走するレーサーの表情から雄大に広がる景観までをダイナミックな構図で捉えた臨場感あふれるレースシーン。レースの躍動感を前面に押し出す、斬新でエキサイティングな撮影方法を模索したメッサーシュミットは、カメラマンを助手席に座らせ、大判のワイドレンズを使って行う手持ち撮影にたどり着いた。
マン監督は自然な反応や動きを大切にし、その瞬間を撮ろうとする。私は監督の考えを制限するようなカメラを使いたくなかった。最近は小さいカメラもあるので、車体のいろいろな場所にカメラを取り付けることができた。昔はできなかった撮影方法だね。
さらに本作を構成するもうひとつのパートは、主人公フェラーリを取り巻く2人の女性、妻ラウラと密かに愛し合うリナとの親密な生活を描くドラマシーンだ。カラヴァッジョの絵画を連想させる画作りを望んでいたというマン監督は、メッサーシュミットを絶賛する。
光が空間を照らし、人々は光の間を移動するような印象を作りたかった。フレーム内の全てに光を照らすのではなく、あくまでも自然に、独立した光を演出したかった。メッサーシュミットの独特な感性は、私のニーズに対し完璧なものだったよ。
メッサーシュミット自身も「イタリアのルネサンス絵画は、建築物と、当時の建築物が空間にもたらす自然の光が特徴だ。光源はただ一つ、窓から注ぎ込む太陽の光だ」と、マン監督の意向をしっかりと理解していたようだ。
そうして作り出された本作のドラマシーンは、俳優たちとその芝居をフレーム内唯一の光源から照らすことで、他の作品とは一線を画す強烈なコントラストで明暗が表現され、美しくドラマティックな人間関係の機微が映し出されている。
レースシーンだけではない、こだわりの詰まった映像美にも注目の映画『フェラーリ』は7月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー