家族のきらめく一瞬をとらえた感動シーン
杏演じる主人公・千紗子が、父・孝蔵の介護のために帰った故郷で、事故で記憶を失った少年・拓未と出会い、母親だと嘘をついて拓未を匿うことから物語が動いていく本作。SNSでは、「ラストの杏さん、中須さんの演技がすごい」「ラストで号泣」「涙が止まらない」「泣いた、泣いた、泣いた!」といった感動の声が数多く届いている。
そんな本作で関根監督をはじめ、杏、中須、奥田も印象的だったと口をそろえるのが“オブジェ”のシーン。3人が笑顔でオブジェを共同で創作する本シーンはすべてアドリブで撮影され、それぞれのリアルな感情、表情が映し出されている。
関根監督は、「必ず良いシーンになると思いながら撮りました。みんなの気持ちが入れ替わるポイントになる大切なシーンで、全員が伸び伸び楽しくやれました」と現場の様子を語る。奥田も「ああしよう、こうしようという作為はまったくないシーン。陶芸家や彫刻家として無我夢中にやっている孝蔵の潜在的な行動が出ていて、それがあのシーンのエネルギーや力になっていると思っています」と明かす。撮影現場で生まれたエネルギーの強さに心が揺さぶられ、涙がこぼれるシーンだ。
千紗子、拓未、孝蔵3人でそろって粘土を捏ね、延ばし、組み合わせ、色を塗っていく。孝蔵が突然頬に絵の具を塗りたくる場面では、千紗子と拓未が楽しそうに悲鳴と笑い声をあげる。さらに、3人はオブジェだけに留まらず、工房全体を彩っていく。孝蔵が思うがままに緑の絵具を出し、それを茎に見立てて拓未が花を描いていく祖父と孫の共同作業がほほえましい。
記憶を失った少年と、絶縁状態だった父と娘。ちぐはぐでぎこちなかった3人がまるで本当の“家族”のように時間をすごす、奇跡のような一瞬だ。明るい笑い声をあげる拓未や顔中絵具だらけの孝蔵、そんな2人を見て笑う千紗子の姿に、観客も自然と笑顔がこぼれ、この日常がずっと続いたらいいのに…。と願ってしまうような幸せに満ちている。
『かくしごと』は全国上映中