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孤独で優雅な“美青年フィリップ”を演じるため、1年かけて鍛えあげた肉体美を披露『フィリップ』本編シーン

孤独で優雅な“美青年フィリップ”を演じるため、1年かけて鍛えあげた肉体美を披露『フィリップ』本編シーン
『フィリップ』©︎TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022
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「行動したい、ただ生きてるのはご免だ」

公開された映像は、うちからほとばしる情熱を持て余すフィリップが、その熱を発散するかのように肉体を鍛錬する様子を捉えたもの。

ユダヤ人であることを隠し、ホテルのウェイターとして働くフィリップ。同じくユダヤ人であることを隠しながら同居する友人は「食うのに困ってもいないのに何が不満なんだ」「ここはアウシュビッツよりましだ」とフィリップをたしなめるが、その言葉はフィリップには届かない。

孤独で優雅、そして逞しい美青年フィリップを演じるため、ダンスやボクシングを学びながら体重を10キロ増。1年かけて見事に鍛えあげたエリック・クルム・ジュニアの肉体美も必見だ。

恋人や家族をナチスによる理不尽な暴力で失ったフィリップ。孤独を癒すために手段を選ばない彼の人物像について監督は、「彼の冷酷でシニカルで反社会な行動が人の嫌悪感を呼ぶように見えるかもしれません。しかしそれはすべて壊れやすく繊細な性格を隠すための仮面です」「フィリップは自分の内なる悪魔を克服するために、他の方法で行動することはできません。現代だったらフィリップはおそらく心理療法士の下に通い詰めているでしょう」と分析。

そして「この映画は戦争映画ではありません。トラウマに苦しむ孤独で疎外された男性についての映画です」と断言。「フィリップは建築家になる夢がありましたが、戦争の運命によって、ホテルのウエイターになりました。この点において彼は現代のウクライナやシリア、パレスチナ、アフガニスタンからの難民の境遇と共通していると言えます。第二次大戦はこの映画の時代設定や舞台装置にすぎません。本当に重要なのは、主人公を悩ませる精神的・道徳的問題であり、それが物語の時代設定に関係なく普遍的なものになることです」と第二世界大戦を舞台にした映画を、戦後80年近く経った今、新たに紡ぎ上げる意義を明かした。

『フィリップ』©︎TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022

ポーランドの作家レオポルド・ティルマンド(1920-1985)の自伝的小説としてポーランド当局の検閲の後大幅に削除されたものが1961年に出版された小説「Filip」。ティルマンド自身が1942年にフランクフルトに滞在していた実体験に基づいて書かれたこの小説、発刊後すぐに発禁処分。長い間陽の目を見ることがなかったが、2022年になってオリジナル版が出版された。

監督は、1990年代よりテレビプロデューサー兼演出家としてキャリアを重ね、21世紀に入って以降はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督作品のプロデューサーとして、後期代表作である『カティンの森』『ワレサ 連帯の男』、そして遺作『残像』まで製作を勤め上げた、ミハウ・クフィェチンスキ。その事実から導き出す魂の解放・自由奔放な姿を第2次大戦、ナチス支配下のドイツを舞台に官能的な要素を加えて本作を映画化、その大きな理由のひとつとして「ポーランドで愛する人を亡くしたユダヤ人の主人公は、そのような状況下で何を感じるでしょうか?私はティルマンドの本を心理的で緻密な映画にし、トラウマから感情が凍り付いた男の孤独を研究することに決めました」と明かしている。

『フィリップ』©︎TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022

『フィリップ』は6月21日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

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