「ハリウッド屈指の珍作」なのに年間ランキング4位の“オランウータン映画”とは?今年94歳イーストウッドが出演を止められた『ダーティファイター』シリーズ

共演者はオランウータン!?名優イーストウッドの新機軸
当時すでに48歳だったイーストウッドが演じたファイロは“ストリートファイター”で、つまりケンカ上等のならず者である。まるでリアルファイトな近年のアクションと比べるとポカスカ感は否めないが、野良ボクシング感のあるケンカ・アクションは観ていて文句なく楽しい。しかし、同シリーズが「珍作」と称される所以は、準主役級のオランウータンの存在である。
Malpaso Company Archives
Original Film Reel Stills.
With Clyde on the set of Every Which Way But Loose 1978… pic.twitter.com/WbFBOVRIGh— Clint Eastwood Official (@RealTheClint) October 12, 2023
イーストウッドはオランウータンとの共演について、エージェントなど周囲の人間からは出演しないよう助言されたという。当時はハードボイルドなキャラクターで人気絶頂だったから、動物ものコメディのせいでファンが離れたら困ると思われたのだろう。しかしイーストウッド自身はまったく後悔していないようで、むしろ同じような役ばかり演じることで飽きられてしまう危機感のほうが強かったようだ。
その判断が功を奏し、『ダーティファイター』は1978年の国内興行収入ランキング4位の大ヒットを記録。そして続編『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』も1980年の興収ランキング5位という大成功を収めてみせた。もちろんオランウータンのクライドの名演が大ヒットに貢献したことは言うまでもなく、のちに「6才児と共演しているようで楽しかった」とイーストウッドも振り返っているように、あたたかな笑いを届けてくれるシリーズである。

『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』©Warner Bros. Entertainment Inc.
▼ケンカ野郎の恋バナ相手はオランウータン!『ダーティファイター』(1978年)
ファイロ・ベドーは大陸を股にかけるトラック野郎。そしてケンカをさせたら彼の右に出る者はいない腕っぷしを誇るケンカ屋。体重75kgの巨大なオランウータンのクライドを相棒に自由気ままな人生を送っていたが、そんなファイロが恋に落ちたから大変。惚れた相手は酒場の美人歌手リン。しかし彼女はスターを目指して旅立ってしまう。そしてリンを追うファイロは次々とトラブルに……。暴走族、復讐に燃えるロス市警、そして伝説のケンカ屋タンク・マードックがファイロの前に立ちはだかる!

『ダーティファイター』©Warner Bros. Entertainment Inc.
アメリカ南西部を舞台に、クリント・イーストウッドが大暴れする本作で彼は、これまでになかった新しい魅力を発揮し代表作のひとつとなった。ソンドラ・ロック、ジェフリー・ルイス、ビバリー・ダンジェロ、ルース・ゴードン等、強力な共演陣も忘れがたい。

PrimeVideo『ダーティファイター(字幕版)』Eirin Approved © 1978 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
▼大ヒットを受けて制作された続編『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』(1980年)
“賭けケンカ”にあけくれる無敵の男ファイロ・ベドーに、ニューヨークの賭け屋ビークマンがひと儲けしようと目をつけた。拳闘チャンピオン、ジャック・ウィルソンとの大試合を1万ドルの前金でもちかけるが、ファイロはあっさりと断ってしまう。怒ったビークマンはファイロの恋する美人歌手リンを誘拐し、彼女の命とひきかえに試合をさせようと彼を誘い出す。そこへファイロとは因縁の暴走族ブラック・ウィドーの一団もなだれ込み、一般大衆も加わっての大乱闘へ!

PrimeVideo『ダーティファイター 燃えよ鉄拳(字幕版)』Eirin Approved © 1980 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
「特集:24時間 クリント・イーストウッド誕生祭」はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送