あまりの愛らしさに思わず「食べちゃうかも…」
映像は、本作の影の主人公ともいえる、安達 祐実、倉科カナ、渡邊圭祐演じる3人暮らし中の主人公たちが迎え入れた、保護猫たちの愛くるしさにあふれたシーンが切り取られている。
仁に誘われて訪れた保護猫の譲渡会で心を奪われ、キジ猫の兄弟を新たに里親として迎え入れることになった3人。ふわふわのクッションに埋もれてぴったりと寄り添う子猫たちを前に「食べち ゃうかもしれない…」「謎に涙が出てくるんだけどこれは何?」「この子たちは、かわいいの権化」と口々にするほどメロメロに。
子猫たちを「銀河鉄道の夜」に登場する一節から“フー”と“ギー”と名付け、愛猫ミカヅキと共に生活することになった。2匹の名前が決まると、話題は3人暮らしをする前から鹿乃子と暮らしていたミカヅキの名前の由来に。ミカヅキは鹿乃子がゴミ捨て場で見つけたサイベリアンの子猫だった。ゴミ袋の中に放り込まれ、助けを求めるように必死に鳴いていた子猫を「なんとしても助けよう」と決意した時、見上げた夜空にきれいな三日月浮かんでおり、“ミカヅキ”と名付けたという。
そこから3人と1匹の愛にあふれる生活が始まり、愛情をまっすぐに受け取ってふわふわで美しい猫に成長した。愛情をたっぷり受けて育った猫と、これからたくさん愛情を注がれる子猫たち。主人公たちの人生の行く末を、一番近くで寄り添って見守る、愛らしい猫の家族たちに注目だ。
<コメント>
戸田彬弘(映画監督)
天使のような人が、天使みたいな映画を創ってしまいました。生き辛さや多様性を問われ続ける時代に、猫のように気ままに生きることの豊かさを感じる。攻撃することなく、気遣うことなく、固執することもなく、ただ今ある日々を見つめること。まさにそれは生きることを愛し確かめるような112分。
宮田愛萌(文筆家・タレント)
登場人物たちみんなが悩みながらも、真っすぐ、自分らしく生きている様子を柔らかな雰囲気でうつしてあり、見ているだけで私もがんばろうと思えるのです。印象的な優しいセリフたちが実際に人の声で発されると、また心への響き方も変わってきてじわじわと、私の心の芯まで温めてくれるようでした。
笠井信輔(アナウンサー)
癒された。「どうしようもない日に効くサプリメント」とは、まさにこの作品のこと。そして猫好きならばよくわかる。それって猫のことなのだ。声を荒げることもなく、穏やかに生きる主人公3人も、まるで猫。猫と暮らしながら、自分たちも猫のように生きられたらとつくづく思う。温かく、ホッとして、幸福感に包まれた。
山谷花純(女優)
誰に捨てられた訳でも無い。友人だっているし帰る家だってあるのに。心の居場所を求め、誰もが違った孤独を抱えて今日も生きている。“一人だけど、みんなも一人”すとんっと背中が軽くなった。今日を終え明日を迎える準備をする。そんな当たり前な日常を生きようとする自分を褒めてあげようと思った。心の休憩所。そんな作品でした。
柳ゆり菜(女優)
目に見えないルールやしがらみに、あたふたする日々を手放そうとする人達に訪れる憩い。それぞれの人生に、正解も不正解も無くて、ただ猫のように、自分を愛して、居場所を愛する。そんな日々を、共に隣を歩いてくれる人がなんとも愛おしい。そんな事をふと気付かせてくれました。「皆で目指そう、お猫様!」
根矢涼香(俳優・写真家)
私達よりはやく歳を取る君たちの、満ちて欠ける月のような瞳に映るのは、落ち込んでは元気になってを 繰り変えすニンゲン生活の機微で、いつのまにか、育てているつもりが見守られているのだと思う。自分だから出会えた人生の光を大切にしてねと、静かな温もりに包まれる。実家のすぐ怒るネコに会いに行きたい…
角張渉(音楽レーベル「カクバリズム」代表)
世代の違う3人の未成熟な部分、徐々に成熟していく部分が重なり合ったり、すれ違いながらも、迷いながら自分の道を少しずつ進んでいく物語は、今年46歳になる僕にも共鳴する瞬間が多々ありました。そして昨年飼い猫を亡くした身としてはやはり再度猫と共に暮らせたらなという気持ちがジーンと湧き上がりました。猫〜!
主題歌のHomecomingsの「Moon Shaped」も素敵に扱ってもらえて嬉しいです。
澤部渡(スカート)/アーティスト
正直に言ってしまうと、観る前は「この映画は私のような(世の中に対して斜に構えているような)人間には向けられていないのでは」だなんて思っていました。しかし、実際に観ると、彼や彼女たちが抱える生きづらさや居心地の悪さがとても身近なものに見え、私も優しくありたい、と思うに至りました。
『三日月とネコ』は5月24日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開