実は“3部作構想”も!? 𠮷田監督お気に入りのロケ地とは
本作の着想は、2021年に公開された『空白』のクランクアップ近く、偶然前を走るミキサー車だった。ミキサー車の運転手ってどういう人かな? といった疑問から始まり、運転手はいつもどんな生活をしているのか? 家族構成は? など様々な足し引きの果てに、『ミッシング』の脚本へとたどり着いたという。
全編が愛知県蒲郡市を中心に撮影された『空白』のクランクアップ後、蒲郡市長から「是非また撮影で使って欲しい」と声をかけられたという𠮷田監督。それに対し監督は、<「空白」、「ソウハク(蒼白)」、「ワンパク(腕白)」の蒲郡3部作>が撮れれば……と、まさかの3部作構想を明かしたという。その“蒲郡シリーズ”の2作目「ソウハク(蒼白)」にあたるのが、本作『ミッシング』というわけだ。
蒲郡市が繋いだ「人間の折り合い」姉妹作
本作では、沙織里(石原さとみ)と夫の豊(青木崇高)が、娘の手がかりを求めて出かけるシーンが蒲郡で撮影された。二人が蒲郡駅前でビラ配りをしているシーンもあり、ここは実は『空白』で寺島しのぶが演じたスーパーの店員・草加部麻子がビラ配りをしていたのと同じ場所。𠮷田監督は、あえて同じ場所を狙ったのだ。
また監督は、これまでも「人は、いかに折り合いをつけられるのか」という物語を描いてきており、『空白』では大事な存在を失った人たちが、どう折り合いをつけていくのかに迫った。そして本作ではそこをさらに掘り下げ、「折り合いをつけられない人は、どのようにすればいいのか?」を描き出している。
試写会の感想には「『空白』につながる部分も感じた」といった声があり、実際、𠮷田監督自身も「『空白』の姉妹編にしたい」という想いがあったという。蒲郡という土地も単なるロケ地を越えて、その”つながり”に貢献しているはずだ。
𠮷田監督「子どものころに遊んだことがあるようなノスタルジーを感じさせる」
蒲郡市は本州の太平洋岸の南東部に位置し、国の天然記念物である<竹島>をはじめ、波静かな三河湾に位置する景色の美しい場所だ。これまでにも、いきなり警視庁内の音楽隊へ異動を命じられた主人公を描く阿部寛主演作『異動辞令は音楽隊!』(2022年)や、竹中直人、山田孝之、齊藤工の3人が共同監督を務めたことも話題になった『ゾッキ』(2020年)など、映画に限らず様々な作品で物語の魅力を引き立たせてきた。
そんな蒲郡の魅力について𠮷田監督は、世界遺産のような風光明媚な場所ではなく、どこにでもありそうなちょうどよい佇まいが「子どものころに遊んだことがあるようなノスタルジーを感じさせる」と評しており、海に面した場所以外も、パッと開けているように感じる独特な街の雰囲気も、お気に入りの理由だそうだ。
作品の魅力を最大に引き出すロケ地も、大切な登場人物の一人。ぜひ蒲郡の美しい風景にも注目したい『ミッシング』は、2024年5月17日(金)より全国公開。
『ミッシング』
とある街で起きた幼女の失踪事件。あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。
そんな中、娘の失踪時、沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていく。一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。
それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。
その先にある、光に———
出演:石原さとみ
青木崇高 森優作 有田麗未
小野花梨 小松和重 細川岳 カトウシンスケ 山本直寛
柳憂怜 美保純 / 中村倫也
監督・脚本:𠮷田恵輔
音楽:世武裕子
制作年: | 2024 |
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2024年5月17日(金)より全国公開