1 2
“聖女”と崇められた尼僧の衝撃半生
『ロボコップ』(1987年)にはじまり、『氷の微笑』(1992年)や『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)など、時代を反映した鋭い社会性と強烈なバイオレンス描写を両立させてきた名匠ポール・ヴァーホーヴェン。カンヌ映画祭の記者会見では本作について、「ルネサンス修道女物語:聖と性のミクロストリア」という大真面目な書籍をベースに脚本を書いたと語っている。
同書は1625年の宗教裁判の記録を調査したものだそうで、かつて“聖女”と呼ばれたベネデッタが別の尼僧と性的関係を持ったことが記されているという。フランスでは18世紀に入ってからも“同性愛の現行犯”で2人の男性が火あぶりの刑に処せられた事件があったくらいなので、17世紀当時、しかも修道院とあってはなおさら厳しかったはずだ。
そこに興味を惹かれたというヴァーホーヴェン監督。本作をラブストーリーとしてだけでなく、当時の教会におけるドロドロとした人間関係や権力争いなど、より重層的な物語にするべく脚色していったという。
ヴァーホーヴェン「どうして皆、セックスの問題になると……」
ヴァーホーヴェンが脚色しただけあって、本作には原作本にはない“衝撃シーン”がいくつかある。いわゆる“敬虔なクリスチャン”ならば鑑賞を止めてしまうであろう描写だが、「セックスの問題になると、どうして急にみんなが生真面目になるのかがわからない」と語るヴァーホーヴェンらしい演出としか言いようがない。
バイオレントでセクシュアル、けれど抜群のユーモアによって多くの映画ファンの心をつかんできたヴァーホーヴェン。『ベネデッタ』は2023年2月に日本公開もされたが、今回のCS初放送のタイミングで周囲の目を気にすることなく、じっっっくり鑑賞してみてはいかがだろう。
『ベネデッタ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送
1 2